2026年10月3日、札幌市中央区北一条西5丁目のアーバンネット札幌リンクタワーに、客室216室の「ハイアット セントリック 札幌」が開業した。事業主はNTT都市開発、ホテル経営はNTT都市開発ホテルマネジメント(ハイアット関連会社と運営委託契約)、施工は大成建設。地上26階建・延床面積約60,941㎡のうち、ホテルはタワー1階の一部と17〜26階を占め、旧HBC(北海道放送)跡地に立ち上がる中位外資ブランドの1棟である。当初2024年春開業予定だったが、施工不良の発覚により地上15階まで組んだ鉄骨を撤去、再着工を経て2026年6月竣工・秋開業に至った経緯を持つ。北海道新幹線札幌延伸前夜における、外資中位ブランドの札幌供給を1棟深掘りする。

ハイアット セントリック 札幌 — 札幌市中央区北一条西・地上26階建タワー外観レンダリング
画像: NTT都市開発株式会社(アーバンネット札幌リンクタワー外観レンダリング)

216室、地上26階建タワー1F一部+17〜26F専有、延床約15,000㎡(ホテル部分)。

目安価格 未定 / 開業前のため公開販売価格未反映

物件概要と立地

札幌市中央区北一条西5丁目1番4、旧HBC北海道放送本社跡地の再開発により誕生した「アーバンネット札幌リンクタワー」は、地上26階・地下2階・塔屋1階、高さ約111m、延床面積約60,941㎡の複合ビルである。事業主はNTT都市開発、施工は大成建設。オフィス・ホテル複合の構成で、ハイアット セントリック 札幌はタワー1階の一部および17〜26階を占有し、ホテル部分の面積は約15,000㎡となる。

立地の要諦は二点ある。第一に、地下鉄大通駅から札幌都心の地下歩行空間ネットワークで直結し、徒歩約6分でアクセスできる点。冬期の降雪・積雪環境下でも屋外に出ずに移動できる動線は、札幌都心ホテルの実務的な差別化要素となる。第二に、JR札幌駅から徒歩約10分、北海道庁旧本庁舎(通称・赤れんが庁舎、2025年リニューアル)に隣接する位置関係で、大通公園・すすきの・札幌駅の三方向いずれにも徒歩圏内という都心中央性を持つ。

敷地面積4,606㎡に対して延床面積約60,941㎡(容積率約1,320%相当)は、札幌中央区高度利用地区の上限に近い建て方であり、都心中心部の地権規模でこの階層を確保できる区画は限られる。旧HBC跡地という一団地の希少性が事業成立の前提となっている。

客室と館内施設

客室数は216室、うちスイート9室。ハイアットのブランド区分では、フルサービス型のモダンブティックホテルとして位置付けられる「ハイアット セントリック」ブランドである。ラグジュアリー階層のパーク ハイアット・グランド ハイアットとは一段下、上級中位ブランドの階層に該当する。17階のメインダイニング「Matsu Grill & Bar」、1階のカフェダイニング「Mr. Fish by Hyatt Centric Sapporo」、24時間利用可能なフィットネス、多目的イベントスペースを備える。

17〜26階の高層階専有により、全客室が10階以上のフロアに配置される点は、既存の札幌都心中規模ホテル(多くが12〜18階建)に対する眺望面の優位となる。

運営体制と事業スキーム

ホテル経営会社はNTT都市開発ホテルマネジメント株式会社で、NTT都市開発はハイアット ホテルズ コーポレーションの関連会社とホテル運営委託契約を結んでいる。国内グループが経営主体となりつつ、外資ブランドの流通網とロイヤリティプログラム(World of Hyatt)を活用する構造となる。

総支配人には、2002年にパーク ハイアット 東京でキャリアを始め、ザ・ペニンシュラホテルズでのバンコク・ニューヨーク・東京・香港などの勤務を経た瀧村勇毅氏が就任する。パーク ハイアット ニセコ HANAZONO副総支配人(2022年)を経て、直近は2023年からハイアットの日本・ミクロネシア地区オペレーション担当部長として23ホテルの運営に携わってきた立場からの起用で、ラグジュアリー階層の運営経験を中位ブランドの立ち上げに投入する人事配置となる。

施工不良と再着工の経緯

本件で特筆すべきは、2023年3月16日に施工不良と虚偽報告が発覚し、地上15階まで組み立てられた鉄骨をすべて撤去、再着工となった経緯である。着工は2021年10月、当初竣工は2024年2月、開業は2024年春を予定していた。施工元請の大成建設は、建て直し費用と工期遅延に伴う違約金として約240億円の損失を計上した旨を公表している。

約2年半の開業遅延は、事業主NTT都市開発の営業計画・区分投資回収スケジュールにも影響し、当初の需要ピーク期(2024年インバウンド急回復期)を捕捉できなかった機会損失を含む。一方で、2026年秋開業はスキーシーズン繁忙期(12〜3月)の直前にあたり、開業初年のレベニュー立ち上げには結果として有利な暦となる。

札幌市場の供給環境と競合ポジション

札幌都心では2019年以降、中位ブランドの新規開業が続いている。206室のJR東日本ホテルメッツプレミア札幌(2019年2月)、318室のソラリア西鉄ホテル札幌(2021年2月)、304室のホテルフォルツァ札幌駅前(2020年8月)、321室のコートヤード・バイ・マリオット札幌(2024年7月)、436室のSAPPORO STREAM HOTEL(2024年1月)、172室のザ・ゲートホテル札幌 by HULIC(2025年12月)と、150〜450室帯の供給が集中する。

ハイアット セントリック 札幌の216室は、この供給帯の中央値に近い規模である。差別化要素は、(1)Hyattブランドの札幌初進出、(2)大通駅地下直結の冬期動線、(3)全客室17階以上の高層階配置、(4)赤れんが庁舎隣接のロケーション、の四点に集約される。札幌にはこれまでハイアット系ホテルがなく、本件が同社の札幌1軒目となる。

北海道新幹線札幌延伸(2038年度以降)を待たずに、外資中位ブランドの札幌集積は先行して進んでいる。

投資回収の視点

NTT都市開発によるハイアット セントリック 札幌の投資額は個別開示されていないが、タワー全体(延床約60,941㎡)の建築工事費・ホテル区分の内装投資・ブランドライセンス料を合算した規模は、比較物件から相当額に達するとみられる。運営委託契約の手数料体系など契約条件の詳細は公表されていない。

札幌都心の中位ブランド供給がここまで集中する中で、開業3年以内にRevPARベースの償却カバーができる水準に立ち上げられるかが、事業成否の一次指標となる。2025〜2026年の札幌ADRトレンド、インバウンド回帰の持続性、冬期ピーク(12〜2月)以外の平準化施策が、開業初期のパフォーマンス評価軸となる。

本記事の参考情報

・Hyatt Centric Sapporo(ハイアット公式) — ブランド情報・開業予定
・NTT都市開発ホテルマネジメント公式リリース(PR TIMES経由) — 総支配人就任・施設概要

よくある質問

Q. 正確な開業日は公表されていますか?

A. 2026年10月3日(土)に開業した。建物は2026年6月30日に竣工している。

Q. 客室タイプ・広さの詳細は?

A. 全216室、うちスイート9室の内訳のみ公表。スタンダードルームのカテゴリ細分・平米数・ベッド構成は開業前パンフレット段階で追加開示予定。17〜26階の高層階配置により、方位別に大通公園・札幌駅・北海道庁方向の眺望が異なる構成が想定される。

Q. ハイアット セントリックはビジネス出張利用に向いているか?

A. フルサービス型で、レストラン2軒・バー1軒と24時間利用可能なフィットネスを備える中位ブランドとして、企業出張の中〜上位帯利用に対応する設計。従来のバジェットビジネスホテル(客室12〜14㎡、シングル中心)とは異なる階層で、法人単価契約は個別交渉が中心となる想定。

Q. World of Hyatt会員のポイント宿泊対象になるか?

A. Hyattブランド運営受託である以上、開業と同時にWorld of Hyattのカテゴリ配分が適用される。

Q. 大通駅・札幌駅から地下歩行での実所要時間は?

A. 大通駅から札幌都心の地下歩行空間(チ・カ・ホ)経由でホテル1階に直結、公表値は徒歩約6分。JR札幌駅からは地上経由で徒歩約10分の距離だが、地下歩行空間の一部を経由することで冬期でも屋外滞在時間を短縮できる導線となる。

編集部から

ハイアット セントリック 札幌は、Hyattブランドの札幌初進出という象徴性を持つ一方、開業までに施工不良と2年半の遅延という異例の経緯を辿った1棟である。事業主NTT都市開発がハイアット関連会社と運営委託契約を結ぶ体制は、日系デベロッパーが外資中位ブランドを都心に導入する事例の一つとして位置付けられ、今後数年で同様の枠組みが札幌・仙台・広島・熊本などの中核市に展開する試金石となる。開業後の初年RevPAR、World of Hyattカテゴリ配分、隣接する既存中位ブランド(ソラリア西鉄・コートヤード・SAPPORO STREAM)との棲み分けが、次に追うべき論点となる。

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