2026年、地方のビジネスホテルで「全館禁煙化」への切り替えが相次いでいる。改装や運営委託の更新に合わせ、客室内の喫煙を全廃し、喫煙は館内または敷地内の指定スペースへ集約する動きだ。背景にあるのは、非喫煙の出張者比率の上昇と、それに追いつかない禁煙客室の在庫不足である。禁煙室が埋まり喫煙室だけが残る状態は、販売機会の損失に直結する。本稿は、公開されている禁煙・喫煙の客室構成と各施設の公式告知をもとに、全館禁煙化が伴う運営上の論点を客室構成・喫煙ブース・分煙動線の三点で整理し、出張者が予約時に禁煙在庫を確実に確保できる施設をどう見分けるかを供給構造から読む。
| 施設 | エリア | 全室禁煙化 | 客室 | Score | 目安価格 |
|---|---|---|---|---|---|
| ホテルニューイタヤ | 栃木・宇都宮 | 2026年1月22日 | 299 | 80 | ¥7,000–¥15,000 |
| 新宮ユーアイホテル | 和歌山・新宮 | 2026年4月1日 | 82 | 84 | ¥13,000–¥19,000 |
| 相鉄フレッサイン長野上田駅前 | 長野・上田 | 改装時に実施 | 118 | 88 | ¥8,000–¥16,000 |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。
※ Media Picks Score は公開レビューデータを集計し、立地・客室規模・本テーマへの適合度を編集部が加味した総合指標です(0–100)。
なぜ2026年に地方で増えているのか
起点は、2020年4月に全面施行された改正健康増進法である。多数の者が利用する施設は原則屋内禁煙となり、喫煙専用室の設置には基準が課された。都市部の大手チェーンは施行前後に全室禁煙へ舵を切った一方、地方の中小規模施設は既存の喫煙客室を残したまま運用を続けた例が多い。ここに需要側の変化が重なる。出張者の非喫煙比率が上がり、禁煙客室から先に売り切れる一方で喫煙客室が売れ残る「在庫の偏り」が常態化した。禁煙室の不足は、そのまま販売機会の損失となる。改装や運営委託の更新は、客室設備を一括で入れ替える数少ない機会だ。2026年に全館禁煙化の告知が地方で目立つのは、この更新サイクルが供給側の判断と噛み合った結果と読める。
全館禁煙化が伴う3つの構造変化
全館禁煙化は「禁煙にします」という掲示の話ではない。供給構造の側で、少なくとも3つの変化を伴う。
1. 客室構成の組み替え。喫煙客室を禁煙客室へ転換し、消臭・原状回復の工程を挟む。これにより禁煙在庫が増え、予約段階での「禁煙が取れない」状態が緩和される。出張者にとっては予約の確実性が上がる。
2. 喫煙ブースの新設・撤去。客室内喫煙を廃す代わりに、館内または敷地内へ指定喫煙所を設ける。屋内に喫煙室を新設するか、屋外の喫煙スペースへ集約するかで投資額と動線が変わる。
3. 分煙動線の再設計。喫煙所をロビー階や低層階へ集約し、客室フロアを完全禁煙とする。喫煙者と非喫煙者の動線を分けることで、におい残りの苦情と原状回復コストの双方を抑える設計だ。以下、公式告知で移行時期が明示された3施設を、この3点で読む。
ホテルニューイタヤ ─ 栃木・宇都宮
JR宇都宮駅徒歩5分、299室。2026年1月22日に全宿泊客室を禁煙化し、喫煙は本館2カ所の指定喫煙所へ集約した。
Media Picks Score: 80 / 100 299室、駅近ビジネスホテル。目安価格 ¥7,000–¥15,000 / 泊(2名1室・通常期)

日本ホテル協会加盟の宇都宮を代表するビジネスホテルで、客室規模は299室と本稿の3施設で最大。公式告知によれば、2026年1月22日からすべての宿泊客室を完全禁煙とし、喫煙は本館地下1階と本館1階南側の2カ所の指定喫煙所へ集約した。客室フロアを一律に禁煙化し、喫煙機能を低層に降ろす分煙動線の典型例である。客室数が多いほど禁煙在庫の絶対量は大きく、直前予約でも禁煙が取りやすい。駅徒歩5分の立地と合わせ、出張の予約確実性という観点で優位に立つ一軒だ。
新宮ユーアイホテル ─ 和歌山・新宮
JR新宮駅徒歩6分、82室。2026年4月1日より客室の全室禁煙化を順次実施し、喫煙は館内の所定スペースのみとした。
Media Picks Score: 84 / 100 82室、駅近ビジネスホテル。目安価格 ¥13,000–¥19,000 / 泊(2名1室・通常期)

紀伊半島南端、熊野三山の玄関口である新宮の駅前ホテル。駐車場無料で、車移動の出張・工事需要を取り込む立地だ。公式告知によれば、2026年4月1日より客室の全室禁煙化を順次実施し、館内での喫煙は所定の喫煙スペースのみとする。82室という中規模施設が改装ではなく運用転換で全室禁煙へ移行する点が、地方における今回の波の特徴を示す。客室単位で喫煙可否を管理していた運用を、施設全体で一律禁煙へ切り替えることで、消臭と原状回復の負荷を平準化する狙いが読み取れる。移行は順次のため、予約時に対象客室かを確認しておきたい。
相鉄フレッサイン長野上田駅前 ─ 長野・上田
上田駅お城口徒歩1分、118室。旧サンルート上田をリブランドし、改装で全室禁煙化。喫煙は指定スペースへ集約する分煙動線を採った。
Media Picks Score: 88 / 100 118室、リブランド・駅前ビジネスホテル。目安価格 ¥8,000–¥16,000 / 泊(2名1室・通常期)

本稿で最も「リブランド」の性格が明快な一軒。旧サンルート上田を相鉄フレッサインへ看板替えし、運営体制の更新に合わせて客室を全室禁煙化した。公開情報によれば、改装では客室内喫煙を廃し、喫煙は館内の指定スペースへ集約する分煙動線を採用している。運営会社の変更と設備更新が同時に走るリブランドは、喫煙客室の転換・喫煙ブースの再配置・動線の引き直しを一括で実施できるため、全館禁煙化と最も相性がよい。上田駅お城口から徒歩1分という近さも、非喫煙の出張者にとって選びやすさを押し上げる。旧名で記憶している向きは、現名称での予約に注意したい。
予約時に禁煙在庫を確実に確保する見分け方
供給構造から読むと、禁煙室を確実に取るための手掛かりは3つに整理できる。第一に、公式サイトに「全室禁煙」「全館禁煙」と明記されている施設を選ぶこと。全室禁煙であれば、そもそも禁煙・喫煙の在庫の偏りが生じない。第二に、喫煙所の設置場所が公式に示されているかを見ること。指定喫煙所の位置が明示されている施設は、分煙動線を設計として運用しており、客室フロアの禁煙が徹底されやすい。第三に、移行時期の告知があるかを確認すること。本稿の3施設のように移行日を公式に告知している施設は、切り替え前後で客室区分が変わるため、予約日が移行日の前か後かで喫煙可否が変わる場合がある。移行が「順次」とある場合は、対象客室かどうかを予約時に確認しておくと確実だ。
よくある質問
Q. 全館禁煙のホテルで、喫煙者はどこで吸えますか?
A. 多くの施設は館内または敷地内に指定喫煙所を設けています。屋内に喫煙室を残す施設と、屋外の喫煙スペースへ集約する施設があります。本稿のホテルニューイタヤは本館内2カ所、新宮ユーアイホテルは館内の所定スペースを指定喫煙所としています。客室内での喫煙は不可です。
Q. 加熱式たばこも対象ですか?
A. 全室禁煙とする施設では、紙巻・加熱式を問わず客室内での使用を不可とする例が一般的です。使用は指定喫煙所に限られるため、詳細は各施設の公式告知で確認してください。
Q. 移行はいつから各施設で適用されますか?
A. 本稿の3施設は、ホテルニューイタヤが2026年1月22日、新宮ユーアイホテルが2026年4月1日(順次)に全客室禁煙化を告知しています。相鉄フレッサイン長野上田駅前は旧サンルート上田からのリブランド改装時に全室禁煙化しています。予約日が移行日の前後どちらかで客室区分が変わる場合があります。
Q. 法人契約や領収書の宛名指定は可能ですか?
A. 本稿の3施設はいずれも出張需要を主とするビジネスホテルで、領収書の宛名・但し書き対応や法人向けプランの取り扱いが一般的です。全館禁煙化と法人利用の可否は別問題で、禁煙化によって法人利用の条件が変わるものではありません。
Q. 全館禁煙化で宿泊料金は上がりますか?
A. 禁煙化そのものが料金へ直接転嫁される事例は限定的です。本稿の目安価格は1泊2名で¥7,000〜¥19,000台で、同エリアの中規模ビジネスホテルの通常期水準の範囲にあります。繁忙期は上振れする傾向があります。
本記事の参考情報
・厚生労働省「受動喫煙対策」 — 改正健康増進法(2020年4月全面施行)の制度概要
・東洋経済オンライン「ビジネスホテルの『全客室禁煙化』は進むのか」 — 業界全体の禁煙化の温度差に関する報道
・各施設の公式告知:ホテルニューイタヤ / 新宮ユーアイホテル / 相鉄フレッサイン長野上田駅前
編集部から
全館禁煙化は、嫌煙という価値観の話にとどまらない。禁煙室の在庫不足が販売機会の損失を生み、喫煙室の原状回復がコストを押し上げる。この二つを同時に解くのが、改装・委託更新のタイミングで客室を一律に禁煙へ切り替える運営判断である。地方の中小規模施設ほど喫煙客室を残してきた分、転換の余地は大きい。2026年に地方で告知が続くのは、更新サイクルと需要変化が噛み合った局面に入ったことの表れと言える。出張者にとっての実利は明快だ。全室禁煙を掲げ、喫煙所の位置を明示する施設は、予約の確実性という一点で選びやすい。次に更新期を迎えるのは、どのエリアのどの規模帯か。供給側の判断は、まだしばらく続きそうだ。
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