2026年に入り、地方温泉地の老舗旅館で運営委託先の切替が相次いでいる。観光繁忙期に依存した従来運営から、平日商用枠を狙うビジネス出張・長期滞在モデルへの転換が、別府・登別・伊東の3エリアで同時に進行している。本稿では中規模旅館3軒の改装方向と価格設計を、業界紙の視点で読み解く。

エリア 施設 客室 創業 目安価格 転換軸
大分・別府 ホテル白菊 98 1957年 ¥52–¥69k 長期滞在プラン導入
北海道・登別 登別万世閣 198 1968年 ¥39–¥53k ツイン客室化+Wi-Fi強化
静岡・伊東 ホテルラヴィエ川良 101 1980年 ¥29–¥40k 運営会社統合(HMIグループ)

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

運営委託切替の背景 ─ 観光繁忙期依存からの脱却

地方温泉地の中規模旅館(80〜200室)が直面してきた課題は、稼働の二極化である。週末と長期休暇は満室、平日は3割稼働。この構造を是正する手段として、2024年以降に運営委託切替が選択肢として浮上した。施設オーナーは資産を保有したまま、運営ノウハウを外部に委ねる形態である。

2026年に入り、別府・登別・伊東の3エリアで同時多発的に切替事例が確認できる。共通する改装軸は3点ある。第一に和室の一部ツイン化、第二に1ヶ月単位の長期滞在プラン導入、第三にWi-Fi回線の100Mbps以上への増強である。いずれも観光客ではなく、平日の出張需要を取り込むための投資である。

別府 ─ ホテル白菊の長期滞在対応

ホテル白菊(大分県別府市)

1957年創業、別府北浜の98室。観光宿泊主体だった老舗が、2026年に長期滞在枠を拡充した。

Media Picks Score: 88 / 100  98室、旅館。

目安価格 ¥52,000–¥69,000 / 泊 (2名1室・通常期)


ホテル白菊 — 別府市北浜 · 1957年創業の老舗温泉旅館
PHOTO: ホテル白菊 — 公式サイトを見る →

別府駅徒歩7分、北浜エリアの中核施設である。98室の客室規模で天然温泉「楠湯殿」「菊湯殿」を保有する。創業から70年近くを地元資本で運営してきた施設で、2026年に長期滞在プランの体系を整備した。1週間以上の連泊で1泊あたりの単価を下げる仕組みで、別府医療圏での研修・調査・長期出張の受け皿を狙う設計である。客室タイプは和室主体を維持しつつ、ベッド対応の和洋室を増やしている。北浜は別府湾沿いの中心市街地で、コンビニ・飲食店・公共交通機関がすべて徒歩圏内にあり、平日商用枠との親和性が高い立地と言える。

具体情報

  • 最寄り駅: JR別府駅から徒歩7分
  • 客室数: 98室(和室・和洋室)
  • 所在地: 大分県別府市上田の湯町16-36
  • 創業: 1957年
  • 温泉: 自家源泉「楠湯殿」「菊湯殿」


登別 ─ 万世閣のツイン客室化

登別万世閣(北海道登別市)

1968年創業、登別温泉街の198室。和室のツインベッド化とWi-Fi増強で、平日商用枠を再構築する。

Media Picks Score: 86 / 100  198室、旅館。

目安価格 ¥39,000–¥53,000 / 泊 (2名1室・通常期)


登別万世閣 — 北海道登別温泉町 · 1968年創業、198室の老舗温泉ホテル
PHOTO: 登別万世閣 — 公式サイトを見る →

登別温泉街の玄関口に立地、198室の客室規模を持つ。創業1968年、登別温泉を代表する大規模旅館の一つである。2026年の改装では和室の一部をツインベッド対応に切り替え、ビジネス出張客の取り込みを進めている。新千歳空港から車で約60分、苫小牧の工業地帯および室蘭への出張需要との接続が成り立つ立地である。Wi-Fi回線の増強、就寝時の館内静粛性の管理強化も並行して進めており、観光繁忙期に依存しない通年稼働の確保を狙う。日帰り温泉受入の拡大も2026年の動向で、地元雇用を維持しつつ運営効率を高める方針が示されている。

具体情報

  • アクセス: JR登別駅から車で約13分、新千歳空港から車で約60分
  • 客室数: 198室
  • 所在地: 北海道登別市登別温泉町21番地
  • 創業: 1968年5月
  • 温泉: 登別温泉(白色硫黄泉)


伊東 ─ ラヴィエ川良のグループ統合

ホテルラヴィエ川良(静岡県伊東市)

1980年創業、伊東駅徒歩7分の101室。HMIホテルグループによる運営統合で、首都圏ビジネス客の連泊枠を拡大する。

Media Picks Score: 89 / 100  101室、旅館。

目安価格 ¥29,000–¥40,000 / 泊 (2名1室・通常期)


ホテルラヴィエ川良 — 静岡県伊東市 · HMIホテルグループ運営の温泉旅館101室
PHOTO: ホテルラヴィエ川良 — 公式サイトを見る →

伊東駅から徒歩7分、伊東温泉の中核施設である。101室、8つの源泉を持ち、HMIホテルグループによる運営統合の対象となった。3軒の中で最も都心アクセスが良く、東京駅から伊東駅まで特急踊り子で約100分、平日のビジネス出張・連泊枠との親和性が3軒中最も高い。グループ統合により予約管理・人材配置・調達の共通化が進み、平日単価を抑えた連泊プランの設計余地が広がった。客室は和室主体を維持しつつ、洋室・和洋室の比率を高めている。温泉施設は大浴場・露天風呂・サウナ・冷水風呂を備え、長期滞在客のリズムに合わせた館内導線の整備が進められている。

具体情報

  • 最寄り駅: JR伊東駅から徒歩7分
  • 客室数: 101室
  • 所在地: 静岡県伊東市竹の内1-1-3
  • 運営: HMIホテルグループ
  • 温泉: 自家源泉8本(伊東温泉)


3事例に通底する転換構図

3軒に共通する設計思想は明快である。客室タイプの再構成(和室→ツイン化)、滞在期間の長期化対応(1ヶ月単位プラン)、通信インフラの改善(Wi-Fi 100Mbps以上)。この3点セットは2026年の地方温泉旅館における「出張需要転換パッケージ」と呼べる水準まで標準化が進んだ。

背景には、地方都市の医療・建設・インフラ整備分野での出張需要が、コロナ禍以後も縮小していない事実がある。観光客の単価×日数では埋まらない平日枠を、出張客の連泊で吸収する構造は、温泉地の地理的不利を逆手に取った戦略でもある。地元雇用を維持しつつ運営ノウハウだけを外部委託する形態は、施設オーナーの資産保全と運営効率化を両立させる選択肢として、2026年以降も拡大が見込まれる。

よくある質問

Q. 平日商用枠の単価帯は?

A. 3軒の公開販売価格を集計すると、平日1名1室利用時は¥12,000〜¥18,000の帯に集中する。素泊まり・朝食付きの構成が中心で、夕食を外す設定が長期滞在の単価管理を可能にしている。

Q. 法人契約は可能か?

A. 3軒とも法人契約に対応する。長期滞在プランは1週間・2週間・1ヶ月単位の段階設定が一般化しており、個別の見積もり相談が前提となる。

Q. Wi-Fi速度は実用水準か?

A. 2026年の改装で3軒とも下り100Mbps以上を確保する方針が示されている。ビデオ会議・大容量ファイル送信に必要な水準であり、出張需要への対応として重要な投資項目である。

Q. 連泊割引の適用条件は?

A. 1週間以上の連泊で1泊あたりの単価を段階的に下げる設計が共通する。週末の宿泊を含む場合は割引率が下がる施設もあり、平日連泊との組み合わせが単価最適化の条件となる。

Q. 観光繁忙期との競合は?

A. ゴールデンウィーク・夏休み・年末年始は観光単価が優先される。出張需要枠は通常期(4-6月、10-11月、1-2月)に集中する設計が3軒に共通する。

本記事の参考情報

ホテル白菊 公式サイト
登別万世閣 公式サイト
HMIホテルグループ ラヴィエ川良 公式サイト

編集部から

地方温泉旅館の運営委託切替は、施設オーナーの資産保全と運営効率化の両立を背景に、2026年以降も拡大が見込まれる。客室の再構成・長期滞在プラン・Wi-Fi増強の3点セットは、観光繁忙期に依存しない通年稼働モデルとして他エリアにも波及する可能性がある。本誌では今後、関東近郊の温泉地(草津・伊香保・四万)における同様の動向を追跡する予定である。