躯体も内装も大きく触らず、ブランドと運営体制だけを切り替える「ソフトリブランド」が地方都市で増えている。建築費・改装費の高騰を背景に、客室数を維持したまま運営会社・予約導線・価格帯だけが変わる転換は、所有と運営を分ける業界再編の典型例である。本稿では、全日空ホテルやクラウンパレスといった既存施設から外資系・グループブランドへ看板を替えた地方ホテル5軒を取り上げ、客室数・リブランド時期・転換構図を整理する。2026年に転換が進む2軒を含む。
| # | ホテル | エリア | Score | 客室 | 目安価格 | 1行特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ANAホリデイ・イン金沢スカイ | 石川・金沢 | 93 | 101 | ¥13–¥24k | 1973年開業の躯体を2014年に転換、客室数を変えず看板替え |
| 2 | ANAクラウンプラザホテル釧路 | 北海道・釧路 | 90 | 180 | ¥34–¥42k | 旧釧路全日空ホテルを2013年に転換、道東出張の拠点 |
| 3 | ザ クラウンパレス高知 | 高知・高知 | 88 | 242 | ¥17–¥27k | 2026年8月にANAクラウンプラザへ転換予定、客室改装を先行 |
| 4 | ANAクラウンプラザホテル米子 | 鳥取・米子 | 86 | 134 | ¥19–¥30k | 旧米子全日空ホテルを2017年に転換、山陰のランドマーク |
| 5 | ANAクラウンプラザホテル知立 | 愛知・知立 | 84 | 105 | ¥13–¥21k | 2026年6月にクラウンパレスから転換、知立市初の外資系ブランド |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。客室数・立地は公開情報、リブランド時期は各ホテル公式情報に基づきます。
1. ANAホリデイ・イン金沢スカイ — 石川・金沢
1973年開業の金沢スカイホテルを、客室数101を変えず2014年にIHG系へ転換。ソフトリブランドの純度が最も高い1軒。
Media Picks Score: 93 / 100 101室、中規模シティホテル。
目安価格 ¥13,000–¥24,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
近江町市場に隣接する武蔵ヶ辻に立つ。1973年に金沢スカイホテルとして開業し、2014年3月にANAホリデイ・インへ転換した。建物・客室数はそのままに、ブランドと予約導線、運営支援だけを切り替えた構図で、本テーマの基準形に最も近い。兼六園・金沢城へも徒歩圏で、出張と短期観光の両需要を取り込む立地が評価を支える。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、立地の良さと価格の手頃さへの評価が安定して高い。中規模ゆえ館内施設は絞られるが、市場や繁華街が徒歩圏にあるため館内設備を補う声が目立つ。築年数のある躯体を活かす転換のため、最新開業ホテルほどの新しさは求めにくく、設備の新旧で評価が分かれる傾向も読み取れる。
向く人 / 向かない人
-
向く:
金沢駅周辺より中心市街に近い宿を求める出張者、市場・繁華街への徒歩アクセスを優先する旅程、価格を抑えたい連泊 -
向かない:
最新設備を最優先する人、大浴場やスパなど館内施設を重視する旅程、金沢駅直結の利便を求める出張
具体情報
- 最寄り駅: JR金沢駅から徒歩 約10分(バス・タクシー約5分)、近江町市場すぐ
- 客室数: 101室(転換前後で維持)
- 運営: IHG・ANA・ホテルズグループジャパンが運営支援
- 開業 / リブランド: 1973年開業 → 2014年3月 ANAホリデイ・インへ転換
- 立地: 石川県金沢市武蔵町(武蔵ヶ辻地区)
2. ANAクラウンプラザホテル釧路 — 北海道・釧路
旧釧路全日空ホテルを2013年に転換。180室を維持したまま運営会社が交代した道東の拠点。
Media Picks Score: 90 / 100 180室、中規模シティホテル。
目安価格 ¥34,000–¥42,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
1993年に釧路全日空ホテルとして開業し、2013年8月にANAクラウンプラザへ転換した。客室数180を維持したまま、運営はGHSが担う。幣舞橋に近い市街中心に立ち、道東のビジネス・観光双方の拠点となる。釧路湿原や阿寒方面へのアクセス起点として、出張と周遊の両需要を取り込む立地が評価を支える。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、道東の中核都市における安定した館内サービスと立地への評価が高い。眺望のよい上層階や朝食への支持が確認できる一方、繁忙期は価格が上振れしやすく、コストと設備のバランスで評価が分かれる傾向も読み取れる。転換後も大規模改装より運営品質の底上げで価値を保つ構図が見て取れる。
向く人 / 向かない人
-
向く:
道東への出張拠点を求める人、釧路湿原・阿寒周遊の起点を探す旅程、国際チェーンの会員特典を使いたい出張者 -
向かない:
価格を最優先する旅程(繁忙期は上振れ)、駅直結を求める出張、最新デザインホテルを望む人
具体情報
- 最寄り駅: JR釧路駅から車で約5分(徒歩約15分)
- 客室数: 180室(転換前後で維持)
- 運営: GHS(2011年に所有取得、2013年に運営ブランド転換)
- 開業 / リブランド: 1993年開業 → 2013年8月 ANAクラウンプラザへ転換
- 立地: 北海道釧路市、幣舞橋・市街中心部
3. ザ クラウンパレス高知 — 高知・高知
2026年8月にANAクラウンプラザホテル高知へ転換予定。242室の躯体を活かし、客室改装を先行する進行中の事例。
Media Picks Score: 88 / 100 242室、大規模シティホテル。
目安価格 ¥17,000–¥27,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
高知新阪急ホテルを前身とし、ザ クラウンパレス新阪急高知を経て、2026年8月にANAクラウンプラザホテル高知へ転換する予定である。242室の規模を維持したまま、転換に先立ち客室改装を進めている点が特徴で、テーマの「進行中のソフトリブランド」を象徴する。高知市中心部に立ち、はりまや橋・帯屋町商店街へ徒歩圏という出張・観光双方に強い立地が評価を支える。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、規模の大きさを活かした宴会・会議対応と中心部立地への評価が安定している。前身時代から続く館内サービスへの支持がある一方、転換期ゆえ設備の新旧が混在し、改装済み客室とそうでない部屋で印象が分かれる傾向も読み取れる。転換後にブランド基準へ揃うことで、評価の底上げが見込まれる段階にある。
向く人 / 向かない人
-
向く:
高知中心部での会議・宴会利用、帯屋町・はりまや橋への徒歩アクセスを求める旅程、転換前後の価格を見極めたい出張者 -
向かない:
全室同一水準の新しさを求める人(転換期で改装に差)、駅直結を優先する出張、小規模で静かな宿を望む旅程
具体情報
- 最寄り駅: とさでん交通・高知中心部、はりまや橋・帯屋町商店街へ徒歩圏
- 客室数: 242室(転換前後で維持)
- 運営: ホテルマネージメントインターナショナル(HMI)、IHGと提携
- 開業 / リブランド: 高知新阪急ホテルが前身 → 2026年3月「ザ クラウンパレス高知」→ 2026年8月 ANAクラウンプラザホテル高知へ転換予定
- 立地: 高知県高知市、市街中心部のシティリゾート
4. ANAクラウンプラザホテル米子 — 鳥取・米子
旧米子全日空ホテルを2017年に転換。134室を維持した山陰のランドマーク型シティホテル。
Media Picks Score: 86 / 100 134室、中規模シティホテル。
目安価格 ¥19,000–¥30,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
2003年に米子全日空ホテルとして開業し、2017年10月にANAクラウンプラザへ転換した。客室数134を維持したまま、山陰のランドマークとして市内中心部に立つ。米子駅から徒歩約10分、コンベンションセンターへも徒歩圏で、出張・会議需要に対応する。米子鬼太郎空港から直通バスが通り、空路アクセスの拠点でもある点が評価を支える。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、山陰中核都市での館内サービスと立地利便への評価が安定している。落ち着いた客室や接客への支持が確認できる一方、地方都市ゆえ繁忙期と通常期の価格差が大きく、コスト感で評価が分かれる傾向も読み取れる。2003年竣工の比較的新しい躯体を活かす転換のため、設備面の古さを指摘する声は限定的である。
向く人 / 向かない人
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向く:
米子・松江圏への出張拠点を求める人、コンベンション利用、空港直通バスを使う旅程 -
向かない:
駅直結を最優先する出張、最安値帯を狙う旅程(繁忙期は上振れ)、大型温浴施設を望む人
具体情報
- 最寄り駅: JR米子駅から徒歩 約10分(米子コンベンションセンターへ徒歩約8分)
- 客室数: 134室(転換前後で維持)
- 駐車場: 無料130台
- 開業 / リブランド: 2003年開業 → 2017年10月 ANAクラウンプラザへ転換
- 立地: 鳥取県米子市、市内中心部・山陰のランドマーク
5. ANAクラウンプラザホテル知立 — 愛知・知立
2026年6月にホテルクラウンパレス知立から転換。105室を維持した知立市初の外資系ブランドホテル。
Media Picks Score: 84 / 100 105室、中規模シティホテル。
目安価格 ¥13,000–¥21,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
ホテルクラウンパレス知立を前身とし、2026年6月1日にANAクラウンプラザホテル知立へ転換した。客室数105を維持したまま、知立市初の外資系ブランドホテルとなる。名鉄知立駅周辺に立ち、名古屋・豊田方面への中間拠点として、出張需要を取り込む立地が評価を支える。転換直後で、ブランド基準への移行が進む段階にある。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、前身時代から続く中規模ホテルとしての使い勝手と中部圏アクセスへの評価が確認できる。転換直後のため新ブランド基準での蓄積は途上だが、立地利便と価格の手頃さへの支持が中心である。大規模改装ではなく運営体制の切替を主とする転換のため、躯体や客室の基本構成は前身を踏襲している点が読み取れる。
向く人 / 向かない人
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向く:
名古屋・豊田圏の出張中間拠点を求める人、価格を抑えたい旅程、国際チェーンの会員特典を使いたい出張者 -
向かない:
転換直後の安定運営を懸念する人、名古屋都心の宿を求める旅程、大規模リニューアル後の新しさを期待する人
具体情報
- 最寄り駅: 名鉄名古屋本線・知立駅周辺、名古屋・豊田方面の中間拠点
- 客室数: 105室(転換前後で維持)
- 運営: ホテルマネージメントインターナショナル(HMI)、IHGと提携
- 開業 / リブランド: 1998年開業(ホテルクラウンパレス知立)→ 2026年6月1日 ANAクラウンプラザホテル知立へ転換
- 立地: 愛知県知立市、知立市初の外資系ブランドホテル
よくある質問
Q. ソフトリブランドとは何ですか?
A. 建物や内装を大規模に改修せず、ホテルのブランドと運営体制、予約導線だけを切り替える手法を指す。客室数を維持したまま運営会社や価格帯が変わる点が特徴で、建築費高騰を背景に地方都市で増えている。新築に比べ投資を抑えられるため、所有と運営を分ける業界再編の象徴とされる。
Q. 法人契約や領収書には対応していますか?
A. 本記事の5軒はいずれも中規模以上のシティホテルで、出張需要に対応する。法人プランや宛名指定の領収書発行は各ホテルで一般的に用意されている。転換後はブランド共通の会員プログラムが使える施設もあるため、詳細は各公式サイトで確認したい。
Q. 転換前後で価格は変わりますか?
A. 一般に、国際ブランドへの転換後は会員向けの価格設定や繁忙期の変動幅が広がる傾向がある。本記事の目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、通常期1泊2名の幅を示している。転換進行中の高知・知立は、移行に伴い価格帯が動く可能性がある。
Q. なぜ「全日空ホテル」が「ANAクラウンプラザ」に変わったのですか?
A. ANAがホテル事業をIHGとの合弁へ移行したことに伴い、全国の「全日空ホテル」が国際チェーンの「ANAクラウンプラザ」へ順次転換した。世界規模の予約システムと会員基盤に接続する狙いがあり、釧路・米子はこの流れの一部である。
Q. 駐車場はありますか?
A. 地方都市の中規模ホテルが中心のため、駐車場を備える施設が多い。米子は無料130台を完備する。台数や料金は施設ごとに異なるため、車利用の場合は事前に各公式サイトで確認したい。
本記事の参考情報
・観光経済新聞 — ホテル業界のリブランド動向
・Wikipedia: 金沢スカイホテル — 転換前後の沿革
・Wikipedia: IHG・ANA・ホテルズグループジャパン — 全日空ホテルブランド転換の背景
編集部から
5軒に共通するのは、躯体を壊さずブランドと運営を入れ替える「低投資型の供給更新」である。建築費と用地取得の壁が高い地方都市では、既存の好立地物件を再生する手法が新築より合理的になりつつある。金沢・釧路・米子は転換から年数を重ね運営が安定し、高知・知立は2026年内に転換が進む進行形の事例だ。所有はファンドや事業会社、運営は国際チェーンという分離の構図は、今後さらに広がるとみられる。次はどの地方ブランドが看板を替えるのか、引き続き追っていきたい。