建設費高騰と都心オフィスの空室を背景に、既存のオフィスビル・商業ビルの躯体をそのまま活かして客室へ用途転換する「コンバージョン」型のホテル再生が、2026年に入って増えている。新築と比べ工期と坪単価を抑えられる一方、窓位置・配管経路・天井高といった既存躯体の制約が客室仕様に残る。本稿では、運営委託の切替や看板替えにとどまらない「躯体転用型リブランド」の事業構造を、室数・立地・転用元用途の3点から読む。取り上げる3軒は、いずれも都心の既存ビルを客室化した実在の事例である。

# 施設 エリア Score 室数 目安価格 転用元用途
1 MIMARU東京 上野NORTH 台東区・上野 93 40 ¥34–¥37k 築27年の事務所ビル
2 MIMARU SUITES 東京日本橋 中央区・日本橋 91 36 ¥60–¥67k 都心オフィスビル
3 Minn 日本橋水天宮前 中央区・日本橋 89 29 ¥22–¥26k オフィスビル(2025年再生)

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

なぜ2026年に「躯体転用型」が増えるのか

用途転換が増える背景は3つに整理できる。第1に建設費の高騰である。資材・労務費の上昇で新築ホテルの坪単価が上がり、既存躯体を再利用すれば工期と初期投資を圧縮できる。第2に都心オフィスの空室である。中規模オフィスの稼働低下が、保有ビルの収益用途を宿泊へ振り向ける動機になっている。第3にインバウンド需要で、長期滞在・グループ滞在向けの客室タイプが不足しており、1室の面積を取りやすい既存オフィス躯体が適している。

ただし躯体転用には固有の制約が残る。オフィスは窓が建物外周に偏り、中央部に無窓スペースが生じやすい。給排水は新設の縦管を通す必要があり、客室レイアウトは既存柱スパンに従う。天井高は階高に規定され、設備を天井裏に収めると居室の高さが削られる。これらが「壁を抜いて客室をつくる」工事の実際の難所であり、滞在品質の差として表面化する。以下、3軒の事例で具体的に読む。

1. MIMARU東京 上野NORTH — 台東区・上野

築27年の事務所ビルを40室のアパートメントホテルへ転用した、躯体転用型コンバージョンの代表例。

Media Picks Score: 93 / 100  40室、地上8階地下1階・鉄筋コンクリート造。

目安価格 ¥34,000–¥37,000 / 泊 (2名1室・通常期)


MIMARU東京 上野NORTH — 台東区上野 · 築27年の事務所ビルを転用した40室のキッチン付きアパートメントホテル
PHOTO: MIMARU東京 上野NORTH — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

本施設は築27年の事務所ビルを躯体ごと転用し、全室キッチン付きの40室へ再生した事例である。既存の柱スパンを活かして1室あたりの面積を確保し、オフィスの大開口を居室の採光に転用した点が設計上の要点となる。JR上野駅から徒歩約8分、家族・グループの長期滞在に対応する客室構成で、転用後も高い稼働を維持している。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計したところ、客室面積とキッチン・洗濯機を備えた滞在の自立性に高い評価が確認された。一方で、転用元のオフィス躯体に由来する一部客室の窓配置や階による眺望差に言及が見られ、躯体転用型に共通する仕様のばらつきが滞在評価に表れている。

具体情報

  • 最寄り駅: JR上野駅から徒歩約8分
  • 室数: 40室(地上8階地下1階・鉄筋コンクリート造)
  • 客室設備: 全室キッチン・ダイニング、ランドリー
  • 転用元用途: 築27年の事務所ビル(躯体転用)
  • 言語対応: 訪日グループ・家族層の利用が中心


2. MIMARU SUITES 東京日本橋 — 中央区・日本橋

都心オフィスビルを地上11階建てのスイート型ホテルへ転用、全36室が57〜59㎡の2ベッドルーム。

Media Picks Score: 91 / 100  36室、地上11階建て。2022年9月29日開業。

目安価格 ¥60,000–¥67,000 / 泊 (2名1室・通常期)


MIMARU SUITES 東京日本橋 — 中央区日本橋 · 都心オフィスビルを転用した全室2ベッドルームのスイート型ホテル
PHOTO: MIMARU SUITES 東京日本橋 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

本施設は都心のオフィスビルを地上11階建てのスイート型ホテルへ転用した事例で、全36室を57〜59㎡の2ベッドルーム構成とした。オフィス基準階の床面積を活かし、1室あたりの面積を大きく取った点が特徴となる。各室にキッチンと2つのバスルーム、洗濯機を備え、家族・グループの長期滞在に対応する。日本橋人形町の駅近立地で、躯体転用と広めの客室供給を両立した。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計したところ、57㎡超の客室面積と2バスルームの構成、滞在の快適性に高い評価が確認された。オフィスビルの大きな基準階を活かした広さが支持の中心であり、躯体転用が「広い客室」という付加価値に直結した事例として読み取れる。

具体情報

  • 最寄り駅: 東京メトロ日比谷線・都営浅草線「人形町」駅から徒歩約2分
  • 室数: 36室(地上11階建て)
  • 客室サイズ: 57〜59㎡(全室2ベッドルーム・スイート)
  • 客室設備: キッチン、2バスルーム、洗濯機、2階カフェラウンジ
  • 開業: 2022年9月29日
  • 転用元用途: 都心オフィスビル(躯体転用)


3. Minn 日本橋水天宮前 — 中央区・日本橋

2025年7月18日開業、オフィスビルを再生した日本橋の29室。最新の躯体転用事例。

Media Picks Score: 89 / 100  29室、2025年7月18日開業。

目安価格 ¥22,000–¥26,000 / 泊 (2名1室・通常期)


Minn 日本橋水天宮前 — 中央区日本橋 · 2025年7月開業、オフィスビルを再生した29室のアパートメントホテル
PHOTO: Minn 日本橋水天宮前 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

本施設は2025年7月18日に開業した最新の躯体転用事例で、日本橋のオフィスビルを再生して29室のアパートメントホテルとした。最大8名まで対応する客室や最大47㎡の広めの間取りを備え、キッチンと乾燥機能付き洗濯機を完備する。建設費高騰下で既存ビルの躯体を活かし、インバウンドのグループ滞在需要に応えた点が、2026年に向けた用途転換の方向性を示す。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計したところ、開業直後ながら客室の広さとキッチン・洗濯設備を備えた滞在の自立性に評価が確認された。レビュー件数は蓄積途上のため評価は今後変動しうるが、躯体転用による広めの客室供給という本施設の設計意図は、利用者の評価に反映され始めている。

具体情報

  • エリア: 東京都中央区・日本橋(水天宮前)
  • 室数: 29室
  • 客室サイズ: 最大47㎡(最大8名対応の客室を含む)
  • 客室設備: キッチン、乾燥機能付き洗濯機
  • 開業: 2025年7月18日
  • 転用元用途: オフィスビル(再生・躯体転用)


3軒が示す用途転換の事業構造

3軒に共通するのは、いずれもオフィス躯体の「広い床」を活かして長期滞在・グループ向けの広めの客室を供給した点である。新築では地価と建設費が二重に単価を押し上げる都心で、既存躯体の価値を客室収益へ転換することで、坪単価と工期を抑えながら需要の厚い客室タイプを供給できる。これが躯体転用型リブランドの中核的な事業構造であり、空室化した中規模オフィスの再生策として2026年以降も広がると見込まれる。一方で、窓位置・給排水・天井高という躯体由来の制約は滞在品質に残り続ける。用途転換の成否は、その制約をどこまで設計で吸収できるかにかかっている。

よくある質問

Q. コンバージョン(用途転換)型ホテルとは何ですか?

A. 既存のオフィスビルや商業ビルの躯体を解体せず活かし、客室へ用途転換して開業するホテルを指す。新築と比べ工期と坪単価を抑えられる一方、窓位置・配管・天井高など既存躯体の仕様が客室レイアウトに残るのが特徴である。

Q. なぜ2026年に用途転換が増えているのですか?

A. 建設費の高騰、都心の中規模オフィスの空室、インバウンドの長期滞在・グループ需要の3点が重なっているためである。既存ビルの躯体を再利用すれば初期投資と工期を圧縮でき、オフィス基準階の広い床は広めの客室供給に向く。

Q. 法人契約や領収書には対応していますか?

A. 本稿で取り上げた施設はいずれも公式サイトから予約でき、領収書の発行に対応している。法人契約・長期滞在割引の可否は施設ごとに異なるため、利用前に各公式サイトで確認するのが確実である。

Q. 用途転換型は滞在品質に差がありますか?

A. オフィス躯体に由来する窓配置や階による眺望差が、客室ごとの仕様のばらつきとして残る場合がある。一方で基準階の広い床を活かした客室面積の広さは、長期滞在・グループ利用での利点となる。

本記事の参考情報

東京都公式観光サイト GO TOKYO — エリアの観光情報
Wikipedia: 日本橋 — 地域・歴史の背景

編集部から

用途転換型リブランドは、運営委託の切替や看板替えにとどまる従来のrebrandとは性質が異なる。既存躯体という制約と資産を同時に引き受け、それを客室収益へ転換する設計判断が問われる。建設費の高止まりと都心オフィスの再編が続くかぎり、躯体転用型の事例は今後も増えるだろう。次に追うべきは、転用元用途別の坪単価と稼働の差である。オフィス転用と商業ビル転用では躯体の制約が異なり、その差が滞在品質と事業性をどう分けるのか。続報で整理したい。

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