広島駅前で計画中のホテル4案件が、2027年11月から2028年3月にかけて相次いで開業します。公表済みの客室数を合計すると1,468室です。ただしこの4案件のうち3案件は既存ホテルの敷地を使っており、すでに閉館した3施設238室分を差し引いた純増は1,230室になります。広島駅から半径1.2km圏で現在流通している客室50室以上のホテルは45施設・約8,500室で、純増1,230室はその約14%に相当します。新駅ビル「ミナモア」が2025年3月に開業し、広島電鉄の駅前大橋ルートが2025年8月に開通した後の駅前で、供給側に何が起きるかを室数と開業時期から整理します。

広島駅前で計画・建設中のホテル4案件(各社公式発表による、2026年7月時点)
# 案件 客室 構造・階数 開業予定 事業主体/運営 所在地
1 アパホテル〈広島駅前通〉 316室 鉄骨造・地上19階 2027年11月 アパホテル 南区的場町1-2-24他
2 voco広島 301室 地上19階・地下1階 2027年下半期 サムティ(所有)/IHG(運営受託) 南区的場町1丁目
3 アパホテル〈広島駅前〉 251室 鉄骨造・地上14階 2027年12月 アパホテル 南区松原町10-17他
4 アパホテル&リゾート〈広島駅前タワー〉 600室 地上32階 2028年3月 アパホテル 南区松原町679-11
合計 1,468室 うち閉館済み3施設238室分を除く純増 1,230室

※ 記事中の目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。客室数・開業時期は各社の公式発表に基づき、変更される場合があります。

供給再編の起点は2025年 ─ ミナモアと駅前大橋ルート

広島駅前の宿泊供給が動き始めたのは2027年ではなく、2025年です。2025年3月24日、JR広島駅の新駅ビル「ミナモア」が開業しました。同じ日、この駅ビルの9〜21階に「ホテルグランヴィア広島サウスゲート」全380室が開業しています。既存のホテルグランヴィア広島407室と合わせ、駅ビル2館で787室の体制になりました。駅直結の位置に380室が一度に加わったことで、駅前の上位価格帯の供給構成はこの時点で先に変わっています。

もう一つの起点が交通です。2025年8月3日、広島電鉄の駅前大橋ルートが開業しました。広島駅停留場は駅ビル2階へ移設され、JR広島駅の中央改札口と同一平面で乗り換えできるようになっています。路面電車が駅ビルの2階に進入する構造は全国で初めてです。これにより、駅の南口側から市内中心部・平和記念公園方面への動線が短縮されました。宿泊需要から見ると、これまで八丁堀・紙屋町側に分散していた出張・観光の滞在拠点が、駅前に寄る条件が整ったことになります。2027年以降の4案件は、この条件変化の後に着地します。

2027年11月〜2028年3月、4案件の着地スケジュール

着地は約5か月間に集中します。2027年内に3案件868室、2028年3月に1案件600室という順序です。案件ごとに事業主体・室数・付帯機能を整理します。

1. アパホテル〈広島駅前通〉 316室 ─ 2027年11月開業予定

大浴場と機械式駐車場を併設する316室。4案件のうち最も早く開業する。

南区的場町1-2-24他に建つ鉄骨造・地上19階建てで、全316室。レストラン、大浴場、機械式駐車場を併設します。敷地面積は587.99㎡、延床面積は6,550.08㎡と公表されています。設計はIAO竹田設計、施工はイチケンが担当します。着工は2025年9月、竣工は2027年10月の予定で、開業は2027年11月です。敷地はJRA「ウインズ広島」の南側にあたり、ホテルの建て替えではなく新規の敷地取得による建設です。したがって、この316室は全数が純増になります。大浴場を持つ宿泊特化型としては、駅前で最大規模の部類に入ります。

  • 客室数: 316室
  • 構造: 鉄骨造・地上19階建(高さ約60m)
  • 延床面積: 6,550.08㎡/敷地面積 587.99㎡
  • 付帯: レストラン、大浴場、機械式駐車場
  • 工程: 2025年9月着工 → 2027年10月竣工 → 2027年11月開業予定


2. voco広島 301室 ─ 2027年下半期開業予定

サムティが所有しIHGが運営受託する301室。voco ブランドの国内2軒目にあたる。

南区的場町1丁目、旧ホテルセンチュリー21広島の跡地に建設中です。地上19階・地下1階建てで全301室。敷地面積1,512.94㎡、延床面積17,371.03㎡と公表されています。所有はサムティ、運営はIHGホテルズ&リゾーツが受託します。両社にとって初の運営受託契約で、voco ブランドとしては大阪に続く国内2軒目です。付帯機能はレストラン、ルーフトップバー、ミーティングルーム、ジムで、宿泊特化型ではなく上位のアップスケール帯に位置します。JR広島駅からは徒歩約4分です。建設地が江戸期の旧西国街道上にあることから、街道を意識した外装・共用部の設計が予定されています。「民間誘導施設等整備事業計画」の大臣認定を取得しており、地域住民が利用できるミーティングスペースと、帰宅困難者の一時避難場所を備える計画です。

  • 客室数: 301室
  • 構造: 地上19階・地下1階建
  • 延床面積: 17,371.03㎡/敷地面積 1,512.94㎡
  • 付帯: レストラン、ルーフトップバー、ミーティングルーム、ジム
  • アクセス: JR広島駅から徒歩約4分
  • 体制: サムティ(所有)/IHGホテルズ&リゾーツ(運営受託)、voco 国内2軒目


3. アパホテル〈広島駅前〉 251室 ─ 2027年12月開業予定

既存2ホテル145室を一体開発で建て替える251室。4案件で唯一、純増が限定される案件。

南区松原町10-17他で建設中の鉄骨造・地上14階建て、全251室です。レストランを併設します。設計は日企設計、施工は熊谷組が担当し、開業は2027年12月の予定です。この案件は新築ではなく建て替えにあたります。同じ場所にあったアパホテル〈広島駅前〉全91室が2024年10月1日に営業を終了し、さらに隣接するホテルサンパレスをアパグループが取得して、2敷地を一体開発する形をとりました。計画室数は当初154室で発表され、隣接地取得後に上方修正されています。旧2施設の合計145室を差し引くと、この案件による純増は106室にとどまります。1敷地あたりの客室効率を14階建てで引き上げた案件と読むのが実態に近いところです。

  • 客室数: 251室(旧2施設145室の建て替え、純増106室)
  • 構造: 鉄骨造・地上14階建
  • 付帯: レストラン
  • 旧施設: アパホテル〈広島駅前〉91室(2024年10月1日閉館)+ホテルサンパレス54室
  • 工程: 2025年10月29日起工式 → 2027年12月開業予定


4. アパホテル&リゾート〈広島駅前タワー〉 600室 ─ 2028年3月開業予定

地上32階・600室。単体で4案件の4割を占め、広島駅とペデストリアンデッキで直結する計画。

南区松原町679-11、地上32階建て・全600室の複合型ホテルです。2024年5月15日に起工式が行われ、開業は2028年春(2028年3月)の予定です。広島駅からはペデストリアンデッキで直接接続する計画が公表されています。上層階には大浴場、屋上にはプールとサウナが計画されており、宿泊特化型ではなくリゾート機能を併せ持つ構成です。建設地はホテル跡地ではなく、旧・広島産業センタービル(フタバ図書GIGA広島駅前店などが入居、2021年9月閉店)の跡地で、解体工事は2022年8月から2023年7月にかけて実施されました。したがって600室は全数が純増となり、4案件の純増1,230室のうち約49%を単独で占めます。

  • 客室数: 600室(全数が純増)
  • 構造: 地上32階建
  • 付帯: 大浴場、屋上プール、サウナ
  • アクセス: 広島駅とペデストリアンデッキで直接接続する計画
  • 工程: 2024年5月15日起工式 → 2028年3月開業予定(当初は2026年開業予定)


総室数1,468室、純増1,230室 ─ 差の238室は何か

4案件の公表室数を単純合計すると1,468室です。ただしこの数字をそのまま供給増として扱うと過大になります。3案件が既存ホテルの敷地を使っており、その旧施設はすでに市場から退出しているためです。

退出済みの3施設は、ホテルセンチュリー21広島93室(voco広島の敷地)、アパホテル〈広島駅前〉旧館91室、ホテルサンパレス54室で、合計238室です。3施設とも現在は販売が確認できません。1,468室から238室を引いた1,230室が、駅前の客室総数に対する実質的な積み増しになります。差の238室は、2022年から2024年にかけて先に抜けた分で、現時点の駅前ストックにはすでに反映済みです。

広島駅から半径1.2km圏で、現在販売が確認できる客室50室以上のホテルは45施設・約8,500室です。純増1,230室はこの約14%、公表室数ベースの1,468室でも約17%にあたります。単年で1割超の積み増しが起きる駅前は多くありません。しかも4案件のうち3案件が2027年11月〜12月の2か月間に集中するため、価格と稼働の調整は2028年の年明けにかけて一度に進むことになります。

アパ1社で駅前2,430室 ─ 供給集中の構造

今回の4案件で見落とせないのが、事業主体の偏りです。1,468室のうち1,167室、およそ8割をアパホテルが単独で供給します。同社の公式発表では、広島駅エリアの既存3ホテル(広島駅前大橋727室、広島駅前新幹線口294室、広島駅前スタジアム口242室)に、建設中の3棟を加えた全6ホテル・総客室数2,430室の体制になるとされています。

先ほどの現行ストック8,522室に4案件1,468室を足すと、完成後の駅前ストックは9,990室になります。この分母に対し、アパホテル1社が2,430室、およそ24%を保有することになります。駅前の客室の4室に1室が同一ブランドという状態は、法人の宿泊手配においては選択肢の幅が実質的に狭まることを意味します。一方で、同一ブランド内で客室タイプと価格を選べる余地は広がるため、出張規程の運用側から見れば取引条件の集約が進みやすい構図でもあります。

価格帯 ─ 空くのは宿泊特化とフルサービスの中間帯

現在の広島駅前の価格分布を、今後90日の公開販売価格から見ておきます。宿泊特化型12施設の目安価格は1泊2名1室で¥19,000〜¥36,000(中央値 約¥26,000)です。これに対し、ホテルグランヴィア広島、ホテルグランヴィア広島サウスゲート、シェラトングランドホテル広島のフルサービス3施設は¥35,000〜¥62,000(中央値 約¥46,000)でした。

この2つの帯の間、中央値でおよそ¥26,000から¥46,000にかけての領域は、現状の駅前では厚みが薄い部分です。voco広島301室が入るのは、ちょうどこの中間帯とみられます。ルーフトップバーとミーティングルーム、ジムを備える構成は宿泊特化型より上、駅ビル系フルサービスより下という位置づけになりやすいためです。アパホテル&リゾート〈広島駅前タワー〉600室も、大浴場・屋上プール・サウナを持つ複合型として、通常のアパホテルより上の帯に置かれる可能性があります。純増1,230室が単純に既存の宿泊特化型と同じ帯に流れ込むのではなく、中間帯が新たに形成される展開が想定されます。

工期リスク ─ タワーは当初2026年開業だった

供給計画を読む際に、開業時期は確定値ではありません。実例が出ています。アパホテル&リゾート〈広島駅前タワー〉は当初2026年開業を予定していましたが、2024年4月から建設業に適用された時間外労働の上限規制、いわゆる2024年問題により工期が延びると判断され、2028年春へ変更されました。約2年の後ろ倒しです。

残る3案件も同じ環境下で施工されます。2027年11月・12月に集中する3案件868室が予定どおり着地するか、あるいは2028年へずれ込むかで、価格調整が始まる時期は数か月から1年単位で動きます。出張の宿泊手配を担当する立場では、開業予定日そのものより「2027年冬から2028年春にかけて駅前の客室が1割強増える」という幅で見ておくほうが実務的です。

よくある質問

Q. 供給増で広島駅前の宿泊単価は下がりますか?

A. 単純な下落は想定しにくいところです。純増1,230室は現行ストックの約14%にあたりますが、うち600室は大浴場・屋上プールを持つ複合型、301室は上位ブランドで、既存の宿泊特化帯とは直接競合しない構成が半分以上を占めます。価格調整が最も出やすいのは、現在中央値¥26,000前後で推移している宿泊特化型の帯です。開業が集中する2027年冬から2028年春にかけて、平日の法人需要が薄い時期に動きが出る可能性があります。

Q. 法人契約の見直しはいつ検討すべきですか?

A. 新規開業ホテルの法人料金は、開業前年から提示が始まるのが一般的です。2027年11月・12月開業の3案件であれば2027年に入ってから、2028年3月開業のタワーであれば2027年半ば以降が目安になります。開業直後は稼働を積むために条件が出やすい局面ですが、同時に運営が安定するまでの期間でもあります。既存契約の更改時期と重ねて比較するのが実務的です。

Q. 駐車場は確保されますか?

A. 4案件のうち、駐車場の併設が公式に示されているのはアパホテル〈広島駅前通〉です。同ホテルは機械式駐車場を併設します。他の3案件については、駐車場の有無・台数は現時点で公表されていません。車利用の出張が中心であれば、開業後に各ホテルの公式案内で台数と料金を確認する必要があります。

Q. voco広島はどの価格帯に入りますか?

A. 具体的な料金は未公表です。voco はIHGホテルズ&リゾーツのアップスケール帯のブランドで、国内では大阪に続く2軒目にあたります。レストラン、ルーフトップバー、ミーティングルーム、ジムを備える構成から、現在の広島駅前の宿泊特化型(中央値 約¥26,000)とフルサービス(同 約¥46,000)の中間帯に置かれる可能性が高いとみられます。

Q. 開業時期が変更される可能性はありますか?

A. あります。アパホテル&リゾート〈広島駅前タワー〉は、建設業の時間外労働規制に伴う工期延長により、当初の2026年開業予定から2028年春へ変更された実績があります。他の3案件も同じ施工環境にあり、公表されている開業予定は今後変更される可能性があります。本記事の室数・時期は各社の公式発表に基づく2026年7月時点の情報です。

本記事の参考情報

アパホテル株式会社 公式リリース「広島駅エリア 2棟同時着工 全6ホテル・2,430室」 — 広島駅前・広島駅前通の室数、階数、開業予定
アパホテル株式会社 公式リリース「アパホテル&リゾート〈広島駅前タワー〉起工式」 — 600室・地上32階、ペデストリアンデッキ接続計画
IHG・ANA・ホテルズグループジャパン 公式リリース「2027年、voco 広島を開業」 — 301室、サムティとの運営受託契約
広島市「2025年8月3日より駅前大橋ルートが開業します」 — 広島駅停留場の駅ビル2階移設

編集部から

広島駅前の供給を読むときに必要なのは、公表室数の合計ではなく、すでに退出した客室を差し引いた純増です。今回のケースでは、1,468室という数字と1,230室という数字の差が238室あり、率にすると16%の開きが出ます。同じことは、既存ホテルの建て替えを伴う駅前再開発では各地で起きています。もう一点、供給の8割が1社に集中している事実も、価格形成の読み方を変えます。今後は、2027年内の3案件が予定どおり着地するかどうかが最初の分岐点です。工期の進捗と、法人料金の提示開始時期を続けて追います。

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ファクトチェック結果(2026年7月25日)

本記事の記載事実57件を各社公式発表・自治体資料・自社データベースで照合しました。内訳は 検証済50件/要訂正6件/裏付け不能1件です。以下の6件は公表資料と相違があり、訂正が必要です(タイトル・本文とも未修正)

  • 広島駅前エリア(全体):記事の「敷地の旧ホテル3施設の閉館分は合計238室」→ 約221室(ホテルセンチュリー21広島 約76室+アパホテル〈広島駅前〉旧館91室+ホテルサンパレス54室)。センチュリー21を93室としたため238室は約17室過大(出典:hiroshima.keizai.biz
  • 広島駅前エリア(全体):記事の「4案件の純増客室数は1,230室」→ 約1,247室(1,468室−約221室)。記事タイトル・要点・表・見出しの1,230室および238室が連動して要修正(出典:hiroshima.keizai.biz
  • 広島駅前エリア(全体):記事の「純増1,230室は駅前1.2km圏の現行ストックの約14%にあたる」→ 純増を約1,247室とすると約15%(約8,500室比)(出典:hiroshima.keizai.biz
  • アパホテル〈広島駅前通〉:記事の「2025年9月着工・2027年10月竣工・2027年11月開業」→ 着工(起工式)は2025年10月29日。アパホテル〈広島駅前〉と2棟同時着工で、公式リリースも同日付。竣工2027年10月・開業2027年11月は正(出典:prtimes.jp
  • voco広島:記事の「vocoはIHGホテルズ&リゾーツのアップスケール帯のブランド」→ IHG公式のブランド区分では voco は「プレミアム」カテゴリー(アップスケールではない)。IHGリリースも『プレミアムホテルブランド』と表記(出典:prtimes.jp
  • アパホテル&リゾート〈広島駅前タワー〉:記事の「600室は4案件の純増1,230室のうち約49%を占める」→ 純増を約1,247室とすると約48%(出典:hiroshima.keizai.biz

※ 目安価格および駅前1.2km圏の施設数・客室数は、メトロエンジンリサーチ(OTA価格分析/ホテルデータベース)の集計値です。

主な参照先
アパホテル株式会社 公式リリース「広島駅エリア 2棟同時着工 全6ホテル・2,430室」
アパホテル株式会社 公式リリース「アパホテル&リゾート〈広島駅前タワー〉起工式」
IHG・ANA・ホテルズグループジャパン 公式リリース「2027年、voco 広島を開業」
広島経済新聞「『ホテルセンチュリー21広島』が今夏、閉館」(客室数 約75室)
中国新聞「アパホテル&リゾート広島駅前タワー、2024年問題で開業遅れ」
広島市「2025年8月3日より駅前大橋ルートが開業します」