押上駅から徒歩5分の墨田区押上1丁目に、客室25室・全室42.3平米以上のアパートメントホテル「KOKO HOTEL Residence 東京押上」が2026年7月16日に開業しました。重量鉄骨造7階建て、延床面積1,661.13平方メートル。土地・建物の保有をプライム ライフ テクノロジーズ(PLT)、設計・施工をパナソニック ホームズ、ホテル運営をポラリス・ホールディングスが担う三社連携の事業スキームをとります。駅前の宿泊特化型とは客室単価も稼働の作り方も異なる小規模・大区画型の供給として、運営構造から読み解きます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | KOKO HOTEL Residence 東京押上 |
| 開業日 | 2026年7月16日 |
| 所在地 | 東京都墨田区押上1丁目40-11 |
| 構造・規模 | 重量鉄骨造 地上7階建て |
| 敷地面積 / 延床面積 | 543.07平方メートル / 1,661.13平方メートル |
| 客室数 | 25室(全室禁煙) |
| 客室面積 | 42.3〜58.2平方メートル |
| 最大収容 | 大人7名(スーペリア・デラックス) |
| 建築主 | プライム ライフ テクノロジーズ |
| 設計・施工 | パナソニック ホームズ(重量鉄骨造商品「ビューノ」) |
| 運営 | ポラリス・ホールディングス |
| 環境認証 | BELS取得。ZEHおよび東京ゼロエミ住宅基準に対応 |
| 宿泊単価(目標) | 月平均4万〜5万円程度(変動価格制) |
※ 宿泊単価は事業者が開業時点で公表した目標値です。変動価格制を採用しており、実際の販売料金は日々変動します。

保有・設計施工・運営を分ける三社連携
本件の特徴は、1棟のホテルを3社が役割分担して立ち上げた点にあります。土地と建物を保有するのはPLTで、同社が2026年4月に新設した「まちづくり事業本部」によるホテル開発案件の第1弾にあたります。設計と施工はグループ会社のパナソニック ホームズが担い、完成後の運営はホテル運営専業のポラリス・ホールディングスが受託しました。造作家具・照明・カーテンなどのFFEでは、同じくPLT傘下のミサワホームが調達に協力しています。
PLTは2020年1月設立で、パナソニック、トヨタ自動車、三井物産の3社を株主に持ちます。傘下にはパナソニック ホームズ、トヨタホーム、ミサワホーム、パナソニック建設エンジニアリング、松村組の5社が並びます。グループ全体のホテル実績は開発中・売却済みを含めて計29件。内訳は首都圏6件、関東近郊8件、近畿7件、九州3件、沖縄3件、中部2件です。押上案件は、同社が保有して運営を委託する4物件のうち最初に開業した1棟にあたります。残る3件は那覇(ポラリスが運営予定)、本庄(着工済み)、富山県高岡市の旧高岡共立銀行を活用した複合開発です。
保有と運営を分ける構図自体は珍しくありませんが、建築主が住宅系メーカーの持株会社で、施工が同一グループ内、運営だけを外部の専業会社に出す形は、ホテル開発としては供給側の入口が住宅であることを示しています。開業に先立つ2026年7月13日には現地でテープカットセレモニーが開かれ、PLTまちづくり事業本部長の大河内潤氏、パナソニック ホームズ東京支社長の大森俊明氏、ポラリス・ホールディングス代表取締役社長の田口洋平氏が出席しました。
「ビューノ」採用で工期を約3カ月短縮
建物は重量鉄骨造の地上7階建てです。パナソニック ホームズは多層階に対応する重量鉄骨造プレハブ商品「ビューノ」を採用しました。同社の説明によれば、15センチピッチで設計できるため、地価の高い都内で敷地を隅々まで使い切れます。外部足場を組まず内側から施工する工法のため、外周をぎりぎりまで広げた建設が可能です。工期は鉄筋コンクリート造と比べて約3カ月短縮できるとしています。
建築費と人件費の上昇が続く局面で、工期短縮は投資回収の前提を左右します。プレハブ工法により鉄筋工や型枠工の必要人数を減らせる点も、職人不足への対応として挙げられました。外壁には光触媒を焼き付けたタイルを使い、紫外線で排気ガスや汚れを分解して雨で洗い流す仕様とすることで、長期の外観維持とメンテナンスコストの抑制を狙います。制震装置を設置し、ZEHと東京ゼロエミ住宅基準に対応、BELSも取得しました。
もう1点、事業の可逆性が設計に織り込まれています。PLT側の説明では、この建物はもともと賃貸住宅として企画され、ホテル需要の伸びを見て用途をホテルに変更した経緯があります。将来は住宅に転用できる設計で、各室の内法面積は約53平方メートル、壁芯ではおよそ60平方メートル。ファミリー向け賃貸マンションとしても成立する区画サイズです。宿泊需要が変調した場合に賃貸住宅へ戻せる建物として組んである点は、25室という小規模の事業リスクを設計段階で吸収する考え方といえます。
全25室・42.3〜58.2平米、5タイプの客室構成
客室は5タイプで、いずれも42平米を超えます。公式サイトおよび開業時の公表資料に基づく内訳は次のとおりです。
| 客室タイプ | 面積 | 室数 | ベッド幅 |
|---|---|---|---|
| スタンダードルーム | 42.8〜44.1㎡ | 6室 | 85cm、140cm×2 |
| コンフォートルーム | 42.3〜43㎡ | 6室 | 85cm×2、140cm |
| モデレートルーム | 45.1㎡ | 1室 | 85cm×2、160cm |
| スーペリアルーム | 54.1㎡ | 6室 | 85cm×2、160cm |
| デラックスルーム | 58.2㎡ | 6室 | 85cm×2、160cm |
スーペリアとデラックスは大人最大7名、コンフォートとモデレートは最大5名まで泊まれます。モデレートは夜間にソファをベッドとして使う形での5名利用です。全室にキッチン設備、IHコンロ、電子レンジ、電気ケトル、キッチンツール、冷蔵庫、洗濯機を備え、風呂・トイレ・洗面台は独立。バスタブ付きバスルームとシモンズ製ベッド、無料Wi-Fi、USBコンセントが標準です。1室あたりの区画が広いぶん、25室で延床1,661.13平方メートルという構成になります。

レストランを置かない運営、館内機能は絞り込み
館内設備は屋上テラスに絞られています。公式サイトの館内設備欄で「あり」と示されているのはテラスのみで、レストラン、大浴場、サウナ、ラウンジ、バー、宴会場、無料朝食、喫煙スペースはいずれも非設置です。テラスの利用時間は7:00〜21:00。東京スカイツリーを間近に望む眺望が売りとされます。
運営会社側は、レストラン非設置を意図的な選択として説明しています。ポラリス・ホールディングスの田口社長は、実際の利用者は3週間ほど滞在する例が多く、その間毎日館内のレストランで食事をとるのは費用面でもメニュー面でも現実的ではないとし、周辺の選択肢から選ぶ利用が中心になるとの見方を示しました。館内飲食を持たないことで、少人数での効率的な運営が成立します。
この設計は、宿泊者側の実務にそのまま跳ね返ります。フロント対応は5:00〜翌1:00で、深夜1時から早朝5時までは常駐対応がありません。客室清掃は3日に1度が標準で、毎日の清掃を求める場合は1日4,000円の追加清掃を申し込む形になります。館内に駐車場はなく、近隣のコインパーキング利用が前提です。連泊で費用を抑えたい滞在には合いますが、深夜到着が多い出張や、毎日の清掃を前提とする社内規程には調整が必要になります。
民泊との線引きについても、運営会社は旅館業法に基づく許可を取得した施設であると明示しています。無人運営が中心の民泊とは異なり、人を配置して運営する点を差別化要素に置いています。
押上という立地 — 空港直通と3路線
最寄りは東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄浅草線・京成押上線が乗り入れる押上駅で、A1・B3出口から徒歩約5分。東武スカイツリーラインのとうきょうスカイツリー駅からはB3出口より徒歩約10分です。東京スカイツリーと東京ソラマチへは徒歩圏に入ります。
出張利用で効くのは空港アクセスです。成田空港からは京成線直通で押上駅まで乗り換えなし、羽田空港からも京急線・都営浅草線直通で乗り換えなしで到達します。スーツケースを持つ長期滞在者にとって、乗り換えゼロで2空港に接続する立地は数字以上の意味を持ちます。車では首都高速6号向島ICから約10分、7号小松川線錦糸町出口から約10分。ただし前述のとおり施設内駐車場はありません。
押上・錦糸町圏はこれまで、宿泊特化型の中規模ホテルが中心の供給構成でした。そこに1室42平米以上・25室のみという逆の振り方をした1棟が入ることになります。同じ半径のなかで在庫を奪い合う相手というより、3名以上の同室利用と自炊需要という別の層を取りにいく供給と見るのが実態に近いといえます。

KOKO HOTEL Residenceの展開 — 稼働4棟、開業予定9棟
ポラリス・ホールディングスは全国で約100ホテルを運営する運営専業会社です。主力の「KOKO HOTEL」に対し、キッチンと洗濯機を備えた大区画型をサブブランド「KOKO HOTEL Residence」として切り出しています。
公式サイトのホテル一覧(2026年7月27日時点)では、稼働中のKOKO HOTEL Residenceは4棟です。浅草かっぱ橋42室、浅草田原町47室、東京押上25室、京都 二条城36室。いずれも25〜47室で、宿泊特化型の1棟規模とは桁が異なります。
開業予定は、運営会社ポラリス・ホールディングスのIR開示「運営予定ホテル」(2026年7月時点)で9棟が公表されています。北上野(仮称)39室が2027年2月、広島銀山町(仮称)54室が2027年4月、熊本上通(仮称)29室が2027年6月、上野 新御徒町Ⅰ(仮称)52室が2027年10月、東京京橋(仮称)36室が2027年12月、上野 新御徒町Ⅱ(仮称)52室が2028年2月、本所吾妻橋(仮称)45室が2028年3月、上野 新御徒町Ⅲ(仮称)45室が2028年夏期、同Ⅳ(仮称)65室が2029年1月です。なお、ブランドサイトのホテル一覧に併記された開業時期は旧計画のもので、IR開示とはずれがあります。9棟のうち6棟が台東区と墨田区に集中しており、押上の1棟はこの面展開の一部として置かれていることが分かります。本所吾妻橋は押上から1駅ほどの距離にあり、同一運営会社による近接立地の重ね張りが進む形です。
運営会社が示した市場観も併せて記録しておきます。田口社長は、訪日客のうち20〜30%程度が家族旅行とされる一方、都内のアパートメントホテル業態の供給は全体の1〜2%程度にとどまり、需給ギャップが大きいと説明しました。日本政府観光局の推計では2025年の訪日外国人旅行者数は4,268万人で、過去最高を更新しています。3名以上が同室で泊まれる商品が国内の供給に乏しいという指摘は、25室・全室42平米以上という構成の背景を説明するものです。
この1棟が合う出張・合わない出張
-
合う:
1週間以上の連泊で自炊と洗濯を客室内で完結させたい滞在、2〜4名のチーム帯同や家族同行の長期出張、成田・羽田から乗り換えなしで入る必要がある移動、押上・錦糸町・両国方面が動線に入る業務 -
合わない:
深夜1時以降の到着が想定される日程(フロント対応は5:00〜翌1:00)、毎日の客室清掃を前提とする社内規程(標準は3日に1度、追加は1日4,000円)、館内で朝食・夕食を済ませたい滞在(レストラン・朝食の提供なし)、車移動が前提の出張(施設内駐車場なし)
具体情報
- 最寄り駅: 押上駅(東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄浅草線・京成押上線)A1・B3出口より徒歩約5分
- 客室サイズ: 42.3〜58.2平方メートル(5タイプ・全25室)
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
- 食事: 館内提供なし(全室にキッチン・IHコンロ・電子レンジ・冷蔵庫)
- フロント対応: 5:00〜翌1:00
- 客室清掃: 3日に1度(無料)/追加清掃は1日4,000円
- 屋上テラス: 7:00〜21:00
- 駐車場: なし(近隣コインパーキング利用)
- 開業: 2026年7月16日
Media Picks Score
Media Picks Score: 76 / 100(暫定)
開業から日が浅く、公開レビューデータの集計母数が形成されていないため、レビュー集計に基づく加点は現時点でゼロです。スコアは立地(押上駅徒歩5分・2空港直通)、客室仕様(全室42平米以上・キッチンと洗濯機の標準装備)、運営体制(旅館業法に基づく許可取得、有人運営)の3点を編集評価した暫定値です。宿泊実績が積み上がった段階で、集計データを反映して見直します。
よくある質問
Q. 法人契約や領収書の発行に対応していますか?
A. 運営するポラリス・ホールディングスは「KOKO HOTELS」として法人契約・団体問い合わせの窓口を公式サイトに設けており、法人ログインの導線も用意されています。個別の与信条件や単価は施設・時期により異なるため、押上の条件は運営会社に直接確認するのが確実です。領収書は宿泊施設として発行されます。
Q. 長期滞在向けの料金設定はありますか?
A. 変動価格制を採用しており、事業側は宿泊単価の月平均4万〜5万円程度を目標値として公表しています。月単位の定額プランについては公式サイトに明示がないため、連泊料金の扱いは予約時点での確認が必要です。全室にキッチンと洗濯機があるため、外食費とコインランドリー費を含めた総額で比較すると実質負担は変わります。
Q. Wi-Fiの通信環境はどうなっていますか?
A. 全客室で無料Wi-Fiが利用でき、USBコンセントも標準装備です。実効速度の数値は公式サイトに記載がないため、常時オンライン会議を行う業務では事前確認を推奨します。館内にコワーキングスペースやビジネスセンターの設定はなく、作業は客室内のダイニングテーブルが前提になります。
Q. 駐車場はありますか?
A. 施設内に駐車場はありません。公式サイトも近隣のコインパーキング利用を案内しています。首都高速6号向島ICから約10分、7号小松川線錦糸町出口から約10分の位置ですが、車移動が前提の日程では駐車コストを別途見込む必要があります。
Q. 何名まで同じ客室に泊まれますか?
A. スーペリアルーム(54.1平方メートル)とデラックスルーム(58.2平方メートル)が大人最大7名、コンフォートルーム(42.3〜43平方メートル)とモデレートルーム(45.1平方メートル)が最大5名です。モデレートはソファをベッドとして使う形での5名利用となります。7名対応の客室は各6室ずつ、合計12室です。
本記事の参考情報
・KOKO HOTEL Residence 東京押上 公式サイト — 客室構成・館内設備・アクセス・基本情報
・プライム ライフ テクノロジーズ ニュースリリース(2026年7月14日) — 事業スキームと建物概要
・パナソニック ホームズ プレスリリース(2026年7月14日) — 構造・階数・「ビューノ」採用とBELS取得
・日本政府観光局(JNTO) 訪日外客統計 — 2025年の訪日外国人旅行者数
・すみだ観光サイト — 押上・東京スカイツリー周辺のエリア情報
編集部から
25室という規模は、単体の収益で見れば決して大きくありません。それでも本件が業界側から見て重いのは、住宅メーカー系の持株会社が土地建物を保有し、グループ内で設計施工を完結させ、運営だけをホテル専業に外注するという入口の作り方にあります。しかも建物は賃貸住宅に転用できる設計で、内法約53平方メートルという区画は住宅としても成立します。宿泊需要が続けばホテル、変調すれば住宅という二段構えは、建築費高騰下で用途を確定しきれない事業者にとって現実的な解になり得ます。KOKO HOTEL Residenceは台東区・墨田区で2027〜2029年に6棟の開業を控えており、同型の供給がこの2区にどこまで積み上がるかは引き続き追う価値があります。
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