2026年上半期、HMI(ホテルマネージメントインターナショナル)は地方の中核都市・政令市で運営する既存ホテルを、IHGとマリオット2社の外資ブランドへ相次いでリブランドする。マリオット系7施設(2025年秋以降)とANAクラウンプラザ系3施設(2026年上半期)を合わせ、計10施設・約2,200室規模が外資ソフトブランドへ切り替わる。所有はHMI側に残し、ブランドと送客網だけを外資から借りる「運営・ブランド分離」モデルが、地方中規模ホテルの新しい標準形になりつつある。本稿はその構造を、高知・浜松・知立3施設の実例から読み解く。
| 現名称 | 転換後ブランド | 都市 | 客室 | 開業 | 目安価格 |
|---|---|---|---|---|---|
| ザ クラウンパレス高知 | ANAクラウンプラザホテル高知 | 高知市 | 242 | 2026年上半期 | ¥15–¥23k |
| ホテルクラウンパレス浜松 | ANAクラウンプラザホテル浜松 | 浜松市 | 192 | 2026年7月1日 | ¥16–¥23k |
| ホテルクラウンパレス知立 | ANAクラウンプラザホテル知立 | 知立市 | 105 | 2026年6月1日 | ¥13–¥20k |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。
10施設・約2,200室を2ブランドへ ── 全体構造
HMIは国内で7ブランド・43施設のホテルと旅館を運営する。2024年春にマリオット・インターナショナルと、同年8月にIHGホテルズ&リゾーツと相次いで事業締結し、既存施設の外資ブランド転換を進めている。マリオット側は7施設・約2,200室を2025年秋から順次転換、IHG側は3施設をANAクラウンプラザへ2026年上半期に転換する。マリオット基準を満たす都市部・リゾート施設はマリオット系へ、地方中核都市の中規模施設はANAクラウンプラザ系へという振り分けが、結果として見て取れる。
マリオット系の転換先は、浜松マリオットホテル(旧グランドホテル浜松)、京都マリオットホテル(旧ホテル平安の森京都)、神戸マリオットホテル(旧ホテルクラウンパレス神戸)、沖縄マリオット・リザン・リゾート&スパ(旧リザンシーパークホテル谷茶ベイ)に加え、コートヤード・バイ・マリオットの神戸・小倉・北九州3施設である。一方IHG系3施設は、いずれも地方の中核都市・政令市に立地する中規模ホテルで、本稿が扱う「地方ブランド連携モデル」の中心にある。
モデルの核は「所有・運営・ブランドの分離」
この転換の構造を一言で言えば、所有はHMI側に残したまま、ブランド名と国際的な予約・会員送客網だけを外資から借りる「ブランドフランチャイズ型」である。施設は大規模改装を行い、IHG側による約2年間の人材研修を経て外資ブランドとして開業する。HMIは運営ノウハウと地域での集客基盤を維持しつつ、外資の会員プログラムとインバウンド送客を取り込める。外資側は自己資本を投じずにブランド網の地方カバレッジを広げられる。双方の利害が一致する構図だ。
地方中核都市の中規模ホテルにとって、単独ブランドでのインバウンド集客と海外OTA経由の予約獲得には限界がある。外資ソフトブランドへの転換は、その壁を改装投資と研修で乗り越える現実的な選択肢になりつつある。10施設規模での同時展開は、この判断が個別施設の特殊事情ではなく、運営会社レベルの戦略であることを示す。
実例1:ANAクラウンプラザホテル高知(旧ザ クラウンパレス高知)
高知市本町、客室242室。IHG系3施設で最大規模の地方中核都市フルサービスホテル。
Media Picks Score: 80 / 100 242室、フルサービスホテル。
目安価格 ¥15,000–¥23,000 / 泊 (2名1室・通常期)

転換のポイント
高知市中心部・本町に立つ242室のフルサービスホテルで、IHG系3施設では最大規模。複数のレストランと宴会場を備える従来型の地方シティホテルが、ANAクラウンプラザブランドの会員送客網に接続される。高知は四国の中核都市でありながら国際ブランドの大型ホテルが限られており、外資看板による差別化余地が大きい。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、立地の中心性と宴会・レストラン機能への評価が確認できる一方、建物・設備の経年に関する指摘も見られる。約2年の研修と改装を伴う今回の転換は、この設備面の課題に対する直接的な手当てと位置づけられる。
具体情報
- 所在地: 高知県高知市本町4-2-50
- 客室数: 242室
- 転換後ブランド: ANAクラウンプラザホテル高知(IHG系)
- 開業時期: 2026年上半期
- 館内施設: 鉄板焼・中国料理・カフェ・バー、宴会場
実例2:ANAクラウンプラザホテル浜松(旧ホテルクラウンパレス浜松)
JR浜松駅から徒歩3分、客室192室。2026年7月1日にANAクラウンプラザへ転換する政令市の駅前施設。
Media Picks Score: 81 / 100 192室、フルサービスホテル。
目安価格 ¥16,000–¥23,000 / 泊 (2名1室・通常期)

転換のポイント
政令指定都市・浜松の駅前に立つ192室の施設で、JR浜松駅から徒歩3分。2026年7月1日にANAクラウンプラザホテル浜松として開業する。浜松は同じHMIのマリオット系(旧グランドホテル浜松→浜松マリオットホテル)も立地し、1都市にマリオット系とIHG系が併存する珍しい構図となる。駅前の出張需要と、外資会員によるインバウンド需要の双方を取り込む狙いが読み取れる。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、浜松駅至近のアクセスと館内レストランへの評価が確認できる一方、客室・設備の更新を期待する声も見られる。今回の転換は駅前立地という強みを外資ブランドで再定義する試みと言える。
具体情報
- 最寄り駅: JR浜松駅から徒歩3分
- 客室数: 192室
- 転換後ブランド: ANAクラウンプラザホテル浜松(IHG系)
- 開業日: 2026年7月1日
- 都市分類: 政令指定都市(同市内にマリオット系も併存)
実例3:ANAクラウンプラザホテル知立(旧ホテルクラウンパレス知立)
名鉄知立駅から徒歩3分、客室105室。2026年6月1日開業、知立市初のIHGブランドホテル。
Media Picks Score: 82 / 100 105室、フルサービスホテル。
目安価格 ¥13,000–¥20,000 / 泊 (2名1室・通常期)
転換のポイント
知立市は政令市ではなく愛知県西三河の中規模都市だが、名古屋・刈谷へのアクセス拠点として産業出張需要を持つ。客室105室と3施設で最小ながら、名鉄本線・知立駅から徒歩3分の駅至近立地で、2026年6月1日に「知立市初のIHGブランドホテル」として開業した。地方の中堅都市でも外資ブランド誘致が成立することを示す事例で、本モデルの裾野の広さを象徴する。なお当ホテルは公式情報が国際ブランド側サイトへ移行している。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、駅至近の利便性とビジネス利用への評価が確認できる。中規模都市の駅前フルサービス施設として、外資会員プログラム接続による稼働の底上げが期待される。
具体情報
- 最寄り駅: 名鉄本線 知立駅から徒歩3分
- 客室数: 105室
- 転換後ブランド: ANAクラウンプラザホテル知立(IHG系)
- 開業日: 2026年6月1日(知立市初のIHGブランド)
- 立地特性: 名古屋・刈谷方面の産業出張需要
今後10施設規模へ ── モデル拡大の論点
HMIはマリオット・IHG2社との連携で計10施設を外資ブランド化する。地方中核都市の中規模ホテルが、改装投資と約2年の研修を条件に外資ソフトブランドへ転換するこのモデルは、人口減局面でも国際送客網を確保したい地方ホテルにとって有力な選択肢となる。論点は3つ。第一に、外資看板化後の客室単価がどこまで上昇し、地元需要との折り合いをつけられるか。第二に、約2年の研修負荷とブランド手数料を、送客増がどこまで回収できるか。第三に、1都市にマリオット系とIHG系が併存する浜松のような構図が、カニバリではなく需要層の住み分けとして機能するか。2026年下半期以降の稼働実績が、このモデルの全国展開可能性を測る試金石になる。
よくある質問
Q. 法人契約や領収書の宛名指定は転換後も可能ですか?
A. 外資ブランド転換後も運営はHMIが継続するため、従来の法人契約・領収書発行の枠組みは基本的に維持される見込みです。具体的な法人レート・請求条件は各施設の営業窓口での確認が確実です。
Q. リブランドはいつ完了しますか?
A. IHG系3施設のうち知立は2026年6月1日、浜松は2026年7月1日にANAクラウンプラザとして開業済み・開業予定です。高知は2026年上半期の開業が公表されています。マリオット系7施設は2025年秋から順次転換が進んでいます。
Q. 転換後に宿泊料金は上がりますか?
A. 現時点の目安価格は3施設とも1泊2名で¥13,000〜¥23,000台です。外資ブランド化と改装に伴い価格帯が上振れする可能性はありますが、確定した改定情報は各施設の公式案内が一次情報になります。
Q. IHGやマリオットの会員ポイントは貯まりますか?
A. 各ブランドへの正式転換・開業後は、それぞれの会員プログラム(IHG One Rewards / Marriott Bonvoy)の対象施設になります。開業前の予約条件は移行時期により異なるため、予約時点でのブランド帰属の確認が必要です。
Q. Wi-Fiや長期滞在対応はどうなりますか?
A. 大規模改装を伴う転換のため、客室設備や通信環境の更新が見込まれます。長期滞在向けプランの有無は施設ごとに異なり、開業後の公式案内で提示されます。
本記事の参考情報
・Wikipedia: ホテルマネージメントインターナショナル — 運営会社の沿革・ブランド体系
・HMIホテルグループ 公式サイト — 各施設の一次情報
編集部から
HMIの10施設一斉転換は、地方中核都市の中規模ホテルが「単独運営+国内集客」から「外資ブランド+国際送客網」へ移行する流れを、運営会社レベルで可視化した事例だ。所有を手放さずブランドだけを借りる分離モデルは、資本を持たない地方ホテルにも国際化の道を開く。鍵は転換後の単価設定と稼働回収のバランスで、2026年下半期の実績が次の判断材料になる。同種の外資連携が他の地方政令市へ広がるか、innippon編集部は継続して追う。