2026年に開業(年内予定を含む)する客室120室以上のホテルは全国114件・計23,793室で、開業件数の上位10都市に件数・客室数とも約4割が集まります。一方で東京・大阪の大型供給は前年から縮小し、沖縄と地方中核都市へ分散しています。
本稿は、宿泊施設の開業登録情報を基に Innippon 編集部が2026年1〜12月の大型開業を市区町村単位で集計したものです。2026年の開業登録は全体で1,580件あり、客室120室以上はその7.2%にとどまりますが、客室数では全体の約6割を占めます。供給の量を左右するのは少数の大型案件です。どの都市に、どの系統の運営会社が、どの規模で出店しているかを整理し、出張需要の計画や投資判断の前提となる供給構造を読み解きます。個別施設は、集中度を象徴する3軒に絞って紹介します。
都市別の開業件数・客室数 ─ 上位10都市で4割
市区町村別に見ると、2026年に客室120室以上のホテルが開業する自治体は73に及びます。ただし、そのうち55自治体は1件のみです。複数件の大型開業が重なるのは18自治体に限られ、上位10都市が件数・客室数のおよそ4割を占めます。東京23区と政令指定都市は区をまとめて1都市として数えています。
| # | 都市 | 開業件数 | 客室数計 | 平均客室数 | 運営系統(件数) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 大阪市(大阪府) | 9 | 1,917 | 213 | チェーン3・外資4・独立2 |
| 2 | 那覇市(沖縄県) | 5 | 1,357 | 271 | チェーン2・外資0・独立3 |
| 3 | 東京23区(東京都) | 5 | 1,230 | 246 | チェーン5・外資0・独立0 |
| 4 | 横浜市(神奈川県) | 4 | 870 | 218 | チェーン2・外資1・独立1 |
| 5 | 札幌市(北海道) | 4 | 735 | 184 | チェーン2・外資1・独立1 |
| 6 | 福岡市(福岡県) | 4 | 681 | 170 | チェーン3・外資0・独立1 |
| 7 | 松山市(愛媛県) | 3 | 684 | 228 | チェーン2・外資0・独立1 |
| 8 | 千歳市(北海道) | 3 | 611 | 204 | チェーン3・外資0・独立0 |
| 9 | 熊本市(熊本県) | 3 | 542 | 181 | チェーン2・外資0・独立1 |
| 10 | 広島市(広島県) | 3 | 462 | 154 | チェーン1・外資0・独立2 |
※ 2026年1〜12月の開業(予定含む)、客室120室以上。9月18日時点の登録ベース。運営系統は編集部分類で、国内で同一ブランドを複数展開する事業者を「国内チェーン」、海外ホテルグループのブランドを「外資系ブランド」、単独・少数展開の事業者を「独立系・地場」としています。
東京・大阪の大型供給は前年の半分に
同じ1〜9月で比べると、客室120室以上の開業は2025年の80件・16,659室から、2026年は100件・21,242室に増えました。全国の総量は増えていますが、中身は変わっています。東京都は10件から4件、大阪府は15件から8件へと、いずれも半分前後に減りました。
増えたのは沖縄県と地方中核都市です。沖縄県は4件から8件に倍増し、北海道も5件から8件に増えました。都道府県別の通年でも、2026年は沖縄県と大阪府が9件で並び、北海道の8件、神奈川県の7件が続きます。東京都は5件で、広島県・熊本県・埼玉県と同水準です。
東京23区の5件はいずれも国内チェーンで、宿泊特化型のビジネスホテルが4件を占めます。都心の大型用地は取得コストが高く、2026年は駅前の中規模案件が中心になったと読めます。ただし建築計画ベースでは、2027年に完成予定の客室120室以上の案件15件のうち4件が都内にあり、東京の大型供給は2027年に戻る見込みです。
那覇は規模、大阪は外資 ─ 集中の中身が異なる
那覇市は5件・1,357室で、平均271室は上位10都市で最も大きい規模です。首里城周辺の2件はいずれも300室を超えます。5件のうち3件を独立系・地場の事業者が占め、全国チェーンの2件と並行して客室を積み増しています。モノレール沿線の市街地に都市型ホテルが集まる点も特徴です。
大阪市は9件・1,917室で件数・客室数とも首位です。9件中4件が外資系ブランドで、全国の外資系大型開業12件の3分の1が大阪市に集まります。立地はなんば・心斎橋・本町の南北軸に偏り、中央区・浪速区・西成区で8件を占めます。2025年の大阪・関西万博後も、訪日客の需要を見込んだ出店が続いています。
地方の集中は産業需要が引き金
上位10都市には、観光都市ではない千歳市が3件・611室で入ります。3件はいずれも国内チェーンのビジネスホテルで、半導体工場の建設に伴う長期出張需要を狙った出店とみられます。熊本県大津町でも2件・415室が開業しており、同じ構図が見られます。
松山市は3件・684室で四国では突出しています。熊本市と広島市も各3件です。地方の開業は、東横INN・ルートイン・アパホテルなど宿泊特化型チェーンの駅前出店が中心です。全国でみると114件中74件がビジネスホテル、国内チェーンが77件・客室数の68.7%を占めます。外資系は12件・2,928室(12.3%)、独立系・地場は25件・4,512室(19.0%)です。
名古屋市は2件・300室にとどまりますが、2026年7月31日に栄で開業したコンラッド名古屋(170室)が含まれます。京都市は1件で、京都駅南側の外資系ホテルが登録上11月の開業予定です。件数の少ない都市では、1件の高価格帯ホテルが市場の価格帯を左右する可能性があります。
集中度を象徴する3軒
以下では、那覇・大阪・東京の3都市から、供給構造を象徴する開業を1軒ずつ取り上げます。Media Picks Score は公開レビューデータを集計した結果に立地・規模・テーマ適合を加味した編集部の指標です。開業から日が浅い施設は、レビュー件数の少なさがスコアに反映されます。
1. ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 那覇 — 那覇市久茂地
2026年1月30日開業、257室。那覇市の大型開業5件の先頭を切った、県庁前駅徒歩約2分の都市型ホテルです。
Media Picks Score: 89 / 100 257室、宿泊主体型のプレミアムホテル。

なぜ選ばれるか
三菱地所グループのロイヤルパークホテルズが展開する「THE シリーズ」の沖縄初出店です。那覇市の大型開業5件のうち、国際通りに近い久茂地の中心市街地に立つのはこの1軒です。ゆいレール県庁前駅から徒歩約2分で、那覇空港からモノレールで約13分です。リゾート立地ではなく、出張と観光の両方に対応する都市型の供給である点が、那覇の供給構造の変化を示しています。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、3軒の中では最も評価件数が多く、総合評価も高い水準です。開業1年目のため件数はまだ積み上がる途中であり、評価の傾向は今後の推移を見る必要があります。
向く人 / 向かない人
- 向く: 県庁・官公庁街へ出張する人、空港からモノレールで直行したい人、那覇市内の短期滞在
- 向かない: ビーチ滞在を主目的とする旅程(海沿いのリゾート立地ではない)、レンタカーで北部を周遊する旅程
具体情報
- 開業: 2026年1月30日
- 客室数: 257室(地上13階・地下1階)
- 最寄り駅: ゆいレール県庁前駅から徒歩約2分
- 空港アクセス: 那覇空港からゆいレールで県庁前駅まで約13分、車で約15分
- 運営: ロイヤルパークホテルズ(三菱地所グループ)
2. ザ・ゲートホテル大阪 by HULIC — 大阪市中央区南船場
2026年6月15日開業、223室。心斎橋駅北改札から直結し、大阪市の大型開業9件を代表する高層階ホテルです。
Media Picks Score: 74 / 100 223室、高層階のライフスタイルホテル。

なぜ選ばれるか
大阪市の2026年の大型開業は、なんば・心斎橋・本町の御堂筋沿いに集中しています。本施設はその軸の中心、御堂筋と長堀通の交差点に立ち、大阪メトロ心斎橋駅から直結です。16〜25階に客室、26階に飲食施設を置く高層型です。外資系4件が並ぶ大阪市で、不動産会社系の運営会社が上位クラスのブランドで出店した例として取り上げます。
集約レビューの傾向
開業から3か月で、公開レビューデータの集計対象として十分な件数がまだありません。Media Picks Score が他の2軒より低いのは、評価件数の少なさを反映したものです。立地と規模の条件は3軒の中でも上位にあり、2027年以降の評価の積み上がりを見て再評価します。
向く人 / 向かない人
- 向く: 本町・心斎橋エリアへの出張、御堂筋線で新大阪駅・なんば駅へ移動する旅程、会食を伴う滞在
- 向かない: 宿泊費を最小限に抑えたい出張(周辺の宿泊特化型より価格帯が上になりやすい)、ベイエリアを拠点にする旅程
具体情報
- 開業: 2026年6月15日
- 客室数: 223室(16〜25階)、全6タイプ
- 客室サイズ: 主力タイプで24〜40㎡
- 最寄り駅: 大阪メトロ心斎橋駅 北改札(出口1)直結、徒歩1分
- 運営: ヒューリックホテルマネジメント
3. ホテルメトロポリタン 大井町トラックス — 東京都品川区広町
2026年3月28日開業、285室。東京23区の2026年の大型開業で唯一のシティホテルで、JR大井町駅に直結します。
Media Picks Score: 88 / 100 285室、駅直結のシティホテル。

なぜ選ばれるか
東京23区の2026年の大型開業は5件で、ほかの4件はビジネスホテルです。本施設はその中で唯一のシティホテルです。JR東日本グループの日本ホテルが運営し、JR東日本が開発する複合施設「大井町トラックス」に入ります。客室は6〜13階です。都心の大型用地が限られる中、鉄道会社の保有地の再開発が大型供給の受け皿になっている例です。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、評価件数はまだ少ないものの、総合評価は3軒の中で最も高い水準です。件数が増えた段階で傾向を改めて確認します。
向く人 / 向かない人
- 向く: 羽田空港を使う出張、品川・大崎・東京駅方面へ移動する旅程、京浜東北線・りんかい線・東急線を使い分ける人
- 向かない: 銀座・丸の内に徒歩で通いたい人、新宿・渋谷など西側を中心に動く旅程
具体情報
- 開業: 2026年3月28日
- 客室数: 285室(6〜13階)
- 最寄り駅: JR大井町駅 直結(3路線利用可)
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
- アクセス: 東京駅・品川駅・羽田空港へ30分圏内
- 運営: 日本ホテル(JR東日本グループ)
よくある質問
Q. 集計の対象はどの範囲ですか?
A. 2026年1〜12月に開業、または開業を予定する客室120室以上の宿泊施設です。2026年9月18日時点の登録に基づくため、10〜12月の開業は今後の登録で増える可能性があります。ブランド変更や改装による再開業を含む場合があります。
Q. 開業日が公式発表と異なる施設はありますか?
A. あります。登録上の開業日は、予約受付開始日や予定日が入っている場合があります。たとえばコンラッド名古屋は登録上6月ですが、実際の開業は2026年7月31日です。本稿で紹介した3軒は公式発表の開業日を記載しています。
Q. 出張者にとって客室が確保しやすくなる都市はどこですか?
A. 2026年に大型開業が集中した大阪市・那覇市・札幌市・福岡市では、選択肢が増えています。千歳市と熊本県大津町は産業需要向けの出店が中心で、長期出張の受け皿が広がっています。法人契約の可否や料金は各施設に確認が必要です。
Q. 2027年以降の大型供給はどうなりますか?
A. 建築計画ベースで把握できる範囲では、2027年に完成予定の客室120室以上の案件は15件です。うち4件が東京都内、2件が札幌市にあり、千葉市美浜区では約1,000室の計画があります。2026年に減った東京の大型供給は2027年に持ち直す見込みです。
本記事の参考情報
・ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 那覇 公式サイト — 客室・アクセス情報
・ヒューリックホテルマネジメント:ザ・ゲートホテル大阪 by HULIC 開業のお知らせ — 開業日・客室構成
・ホテルメトロポリタン 大井町トラックス 公式サイト — 客室・アクセス情報
・三菱地所:コンラッド名古屋 開業のお知らせ — 開業日
編集部から
2026年の大型開業は、総量では前年を上回る一方、東京・大阪から沖縄と地方中核都市へと重心が移りました。那覇は大型化、大阪は外資系の集積、千歳や大津町は産業需要と、集中の理由は都市ごとに異なります。出張需要の計画では、都市別の開業件数だけでなく、運営系統と価格帯の組み合わせを見る必要があります。2027年に東京の大型供給が戻ったとき、2026年に分散した客室需要はどこへ向かうのでしょうか。